6:名無しNIPPER[saga]
2015/10/13(火) 03:15:25.06 ID:BpcSycVC0
「――そんなものかい?」
若干物足りなさそうな葉山に、俺は殴り書きしたノートを畳みながら仕返す。
「ああ、こんぐらいで十分だ。お前の人とナリは知ってるからな。後は資料さえくれたら記事にはなる」
そして、純度100パーセントの賞賛で出来た一言を付け加えてやった。
「どうせ、全部抜かりなくやってるんだろう? お前のことだからな」
葉山はカメムシでも噛み潰したような顔をした。
「どうした? 酒が悪かったか?」
「本当に相変わらず――だな。君というヤツは」
「ここに来たのは帳面消しだ。お互い様だろ? 俺だって仕事じゃなかったら会ったりしない。事実、これまでがそうだったようにな」
言った後で、あまりに露悪的だったかと思わず顔色を伺ってしまう。
「そうだな――その通りだ。俺も君のことが嫌いだったしな。仕事なら仕方ないか」
キャンドルで見える顔は大して怒りもせず……むしろ、昔を懐かしむような色さえ見えた。橙色の灯りのせいだろうか。
「それにしても君がライターとはね……どうだい?」
「人の仕事に寄生してする仕事で食う飯はうまいかとでもといいたいのか?」
俺がジト目を向けると、葉山はあっはっはと笑った。
そのあまりの屈託の無さに俺がびびった。見れば手に持ったグラスは氷の溶け残りばかりになっていた。
「……おかわりはいいのか?」
遠まわしにてめえ飲みすぎてんじゃねえのというニュアンスを伝えると、そこで初めて気が付いたようにヤツはグラスの中身に目を向ける。
すると間髪いれず件のボーイが近付いてきた。たったあれだけの仕草を見ての動作だとしたら――この若造、できる! もう君付けじゃ呼べないネ!
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