過去ログ - 八幡「仕事なら仕方ない」
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1:名無しNIPPER[saga]
2015/10/13(火) 03:07:34.45 ID:BpcSycVC0
 高速運転中のランプは、ものの二十秒もしないうちに消えた。考え事も、躊躇する暇だってありゃしない。

 いや、そんな時間は職場で予定表が張り出されてから腐るほどあったが――

 まあどれだけ考えたって足りないことだったってわけだ。

 ともかくもエレベーターは押したボタンの通りの階で止まり、機能通りにドアは開いた。

 いつもなら日本製万歳というところだが、今夜ばかりはその正確さが恨めしい。

 開けた視界の先は、穏やかな間接照明が大理石の上で絨毯の様に灯りを敷き詰め、そしてガラス越しの夜景を壁紙代わりにあしらったバーラウンジ。

 薄給もいいとこの俺がおいそれと出入りするような空間でないことは、賢明な読者諸君には自明のことであろう――なんてラノベ主人公じみたメタいモノローグが浮かんだ。

 とういうか――いや、あったな。

 いつぞやの探偵気分がデジャヴとなって蘇る。

 あれからもう十年か、という感慨が、この取材が決まって以降何度浸ったことだろう。

 そうして浸っている間にエレベーターがまた階下に降りてゆく時間を稼いでいたのだが、開きっぱなしのハコの中で立ちっぱなしのヤツが居ればさすがに目立つ。

 当然、俺のことを目ざとく見つけた受付の女性が畏まって礼をしてきたので、慌てて俺も礼を返してしまった。
 
 するとその受付からの指示があったか、間髪入れずにボーイが歩み寄ってきて、いらっしゃいませ今夜はお待ち合わせですかと落ち着いてかつ爽やかに予約の有無を尋ねられ、俺はアッハイと言うだけのマシーンと成り果ててしまった。

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2:名無しNIPPER[saga]
2015/10/13(火) 03:09:07.08 ID:BpcSycVC0
 この間ものの5秒。

 上着を、という申し出にアッハイと応えると、ごく自然に一枚剥かれてしまう。

 この間なんと9秒。
以下略



3:名無しNIPPER[saga]
2015/10/13(火) 03:12:25.04 ID:BpcSycVC0
 ああ、見えてきた椅子越しの後姿は、きっとソイツのものだろう。

「葉山様――お連れ様がお見えです」

 夜景をバックにした後姿だけで十分画になるのが腹立つ。
以下略



4:名無しNIPPER[saga]
2015/10/13(火) 03:13:14.41 ID:BpcSycVC0
「変わってなさそうだな、君は」

 ヘブン状態の俺にストUのリュウの中足の如く差し込まれたのは、呆れを通り越して安心感さえ滲ませた一言だった。

「うるせえ」
以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2015/10/13(火) 03:14:07.03 ID:BpcSycVC0
「ま、マックスこーひー……少々お待ち下さい」

 引っ込んでいく背中を眺めつつ、その整ったツラを崩してやったことに多少の達成感を得ながらニヤついていると、横槍が入る。

「次回以降利用し辛くなるような行為はなるべく避けてくれよ?」
以下略



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