70: ◆eO0MHGE6wPTj[saga]
2015/11/18(水) 00:39:37.94 ID:opLhvimn0
外に出ると、夕日が眩しかった。
そこで今が夕方であることを知った。
今の自分の状況も理解しているので、車の使うのを辞める事にする。
運転なんて出来そうに無かったから。
電車で行こうかとも思ったが、あまり時間を掛けるわけにもいかないと思い、タクシーを呼ぶ。
5分ほどでタクシーが着いた。
行き先を伝え、着くのを待っている間、いろいろなことが思い浮かんできた。
ふと凛が目を覚ましたりしないだろうか。
いつもみたいに不意に現れて俺を驚かせてくれないだろうか。
そんな不可能に近い、願望のようなものが次々と浮かび上がる。
目的地に着く頃には、凛がもう退院しているんじゃないか、なんて幻想にまで至ってしまった。
すぐさま現実に引き戻されたが。
オフィスに入ると、そこにいたのは部長だけではなかった。
あまり顔を合わせたことが無く、うろ覚えだったが、確か346プロダクションの社長だ。
俺が促されるままに社長だと思われる人と部長に対面した椅子に座った。
先に口を開いたのは、社長のほうだった。
「君がとても辛い思いをしたのは理解している。ここ数日の無断欠勤についても特に咎めるつもりは無いから安心してくれ。しかし話しておくべきことがあっ
てな。部長、私から話してもいいか?」
「えぇ、それは社長ご自身の判断に任せますよ」
「そうか。それで話というのは2つある。1つは、島村卯月と本田未央を担当していたプロデューサーと、事務作業をしていた社員、2人には自主退職をしても
らった」
「え?」
聞き間違いだろうか。
あの2人が退職した、というのは。
俺にとっての大きな負担となっていたあの2人が。
「君が休んでいた3日間、彼等の書類の出来が今までに比べ余りに雑でな。気になって呼び出して問い正したら、意外にもあっさりと白状したぞ。君に押し付
け、大きな負担を与えた上で自分達が楽をしていたことをね」
「そ、そうだったんですか」
「一応聞いておくが、間違いは無いな?」
「はい、その通りです」
「そうだったのか、気付いてあげられなくて、すまなかった」
部長がそう言って謝った。
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