91: ◆eO0MHGE6wPTj[saga]
2015/11/20(金) 23:53:53.47 ID:htc6S+ds0
人間が波に乗っている時の勢いには目を見張るものがある。
そして、その時の時の流れの速さもだ。
卯月と未央のテレビの仕事をもらってから、既に5ヶ月が経過した。
その期間は特筆するほどの出来事は無かったが、1つ言えることがある。
あのテレビ以来、俺はトントン拍子で仕事を取ってこれる様になった、ということだ。
自分でも怖いくらいに。
話し方に問題があるかもしれないにしろ、周りは全員大人なのだ。
意外と受け入れてくれるものである。
それだけでなく、未央と卯月も、目を覚ました凛を驚かせるとか言って、凄く頑張っている。
今日は、そんな勢いのあり余る俺は、休みを取っていた。
何をするわけではないが、未だに目を覚まさない凛の元へ来ていた。
既に事故に遭って半年以上が経過している。
基本的には絶望的な状況だ。
事故に遭い、半年も意識不明なら、普通なら諦めてしまうかも知れない。
しかし、俺は諦めていなかった。
それに、今日休みを取ったのも理由がある。
昨日、夢を見た。
凛がただただこっちを見て笑っているだけの夢だが、それでも俺は、何かしら予感めいたものを感じ、無理を言って休みをもらったのだ。
これまで、凛の為だと頑張って来た。
俺の人生を変えてくれた凛への恩返しとして。
「凛、俺、もう凛が驚くくらいになれたかな? あれからもう半年、いや、まだ半年、かな。半年経って、普通に仕事が取って来れるようになったんだよ。半
年前までは考えられなかったことだよ。でも、俺がこんなに変われたのは、加蓮や未央、卯月たちと、それに何より凛のお陰だよ」
眠っている凛にそう語りかける。
この声は届いているだろうか。
凛の心に、届いているのだろうか。
「花瓶の水、入れ替えてくるね」
凛の家は花屋をやっていて、ご両親が度々病室に花を持ってきてくれている。
これもその1つだ。
その花の花瓶の水が無くなりかけていたので、入れ替えようと、水道へ向かった。
すれ違う看護師の人に会釈をした。
そんなことまで出来るようになったのだ。
水道へ着き、花瓶の水を入れ替える。
この花はなんていう名前なんだろうか。
凛のように蒼く、美しい。
凛といえばやはり蒼だろう。
そんなことを考えながら病室のドアを開けた時、俺は多分、今まで、いや、人生の中で、一番の奇跡を目にした。
半年間待ち望んだ奇跡。
信じ続けた奇跡。
度々襲い掛かった凛が死ぬかもしれないという恐怖に怯えながらも信じ続けた、その奇跡を。
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