過去ログ - 唯「わたしがオバさんになっても」
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1:けいおんSS[sage saga]
2015/11/26(木) 20:57:05.47 ID:jnRZeB6L0
階段の先を見上げると、暗闇に雨粒が光って見えた。

地下鉄構内を出て地上に上がる。パラパラと降っている弱い雨。
同じ電車から降りた人たちは、次々と傘を開いて駅を出て行った。

あちゃー。朝、家を出るときは降ってなかったのにな。

天気予報はいつもロクに見ていない。

毎朝テレビをつけてるはずなのに、こういうことばっかり。
見ているようで肝心なことを見ていない。いつまで経っても成長しない。

ま、こんなこともあろうかといつも折畳み傘を入れっぱなしにしてるんですけどね!
してるよ成長、これぞ大人の証。

いぇい。勝利のぶい。




……あれ。

………ない。


しまった。
思い出した、昨日バックの整理をしたっけ。


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2:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 20:59:39.92 ID:jnRZeB6L0
ああそーいや今日はイヤに肩が軽い気がしたんだ、と途方に暮れて夜空を見上げると、
イエローの水玉模様が現れた。

「傘、持っていかなかったろ」

以下略



3:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:02:57.21 ID:jnRZeB6L0
「今日の戦果は?」

「上々なら雨の夜にひとりで帰ってくるわけないじゃん」

合コンのあった日、りっちゃんは必ずその日の首尾を聞いてくる。
以下略



4:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:04:32.32 ID:jnRZeB6L0
「アラフォーのりっちゃんに言われたくないよっ」

「お前もあとちょっとで四捨五入すりゃ40だろが」

「ふふん。今夜は“24”って言ったら、だぁれひとり疑う様子すらありませんでした!」
以下略



5:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:07:44.79 ID:jnRZeB6L0


玄関先から灯りが漏れている。

駅から家まで、歩いて五分。走れば三分。傘がなくてもなんとかならなくもない距離だけど、秋の夜寒を雨に打たれて風邪でも引いたら元も子もない。ありがとね、りっちゃん。
以下略



6:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:09:03.22 ID:jnRZeB6L0

扉を開けば発泡酒がずらっと並ぶ冷蔵庫。

「そういえばさぁ、澪ちゃん帰ってきてるって?」

以下略



7:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:10:10.90 ID:jnRZeB6L0
「久しぶりに会えないか、って連絡きたんだけど」

「へー、そうなの」

りっちゃんはソファーに寝っ転がったままテレビに見入っている。
以下略



8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:11:44.10 ID:jnRZeB6L0
ムギちゃんの結婚式。

あまりに大きく広すぎな会場、わたし達はその隅っこに四人固まって座った。
宮殿のような会場にはじめはテンション上がりまくりだったとわたしとりっちゃんも、知り合いがわたし達以外には誰もいなくて、あとは琴吹家関係のアッパークラスの人たちばかりだと気付いてからはずっと大人しくしてた。
澪ちゃんとあずにゃんは初めから緊張でガチガチで、澪ちゃんは自分の格好が場違いじゃないか何度も何度もわたしに尋ねてきた(わたしに聞かれてもわかるわけないじゃん)。とにかく小さくちょこんと座ってご馳走を食べた。
以下略



9:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:13:15.57 ID:jnRZeB6L0


結局ムギちゃんに声をかけられず、式が終わって四人、帰りに白木屋で飲んだ。
披露宴の料理はおいしかったけど、名前も知らない横文字のご馳走より、チェーンの居酒屋のホッケの方がわたしは好きだ。

以下略



10:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:15:38.08 ID:jnRZeB6L0


作り物の笑い声が耳に入ってふと我に帰る。
いつの間にか番組が変わってた。バラエティになってる。
喉の渇きを感じて発泡酒に口をつけた。
以下略



11:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:17:29.79 ID:jnRZeB6L0
「帰るわ」

「珍しいね。泊まってけばいいのに」

「いや、今日はやめとく。あんまり帰らないとうるさいからさ。親も、聡も」
以下略



12:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:18:12.45 ID:jnRZeB6L0
「次、いつ来る?」

「明日はちょっと遅いかも」

玄関のドアを開けると、まだ雨がかすかに降っている。
以下略



13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:20:17.74 ID:jnRZeB6L0


一人きりになると、時計の針の音がやけにうるさく聞こえるのはなんでなんだろう。
半分以上残った発泡酒を一気に飲み干すと、洗面所に足を向けた。

以下略



14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:21:15.95 ID:jnRZeB6L0




若さにこだわってる時点で若くないか。
以下略



15:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:23:16.40 ID:jnRZeB6L0
★★

天井をぐるんぐるんとプロペラが回っている。
随分大きな窓から燦々と太陽が降り注ぐ、秋の午後。

以下略



16:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:24:07.98 ID:jnRZeB6L0
「唯は梓とは連絡とってるのか?」

「んーときどき。会ってはいないけど。ライブやらなんやらで全国を飛び回って忙しいみたい」

たんぽぽコーヒーを飲みながら、澪ちゃんは遠い目をして窓の外を眺めた。
以下略



17:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:26:37.95 ID:jnRZeB6L0


大学を卒業して一旦は一般企業に就職したあずにゃんが、本格的に音楽の道を目指して会社を辞めたのは働き始めて三年目のことだった。

あずにゃんは東京で働いてたから、その頃はもう全然会ってなかったけど、どんなに仕事が忙しくっても毎日ギター触ってたんだって。すごいね。わたし、卒業してからはろくにギー太、弾いてあげてない。
以下略



18:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:28:48.74 ID:jnRZeB6L0


「そっちの方は順調なの?」

「そっち?」
以下略



19:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:29:30.20 ID:jnRZeB6L0


憂は、国立大学の看護学科に進学した。
大学が離れ離れなのは寂しかったけど、憂が自分で考えて選んだ将来の夢を応援したかった。
そして大学卒業した後、希望を叶えて桜ヶ丘の病院の看護婦さんになり、数年してそこのお医者さんと結婚した。
以下略



20:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:32:10.17 ID:jnRZeB6L0


「しあわせそうだね」

思わず口に出た言葉が、嫌味っぽかったんじゃないかと気付いたけどもう遅い。
以下略



21:名無しNIPPER[sage saga]
2015/11/26(木) 21:33:26.04 ID:jnRZeB6L0
「アイツ、あんまり家にも帰ってないんだろ。友達の家に入り浸りだって律ん家のオバさんから聞いてさ。唯のことだと思って。迷惑かけてゴメンな」

「なんで澪ちゃんが謝るのさ」

等間隔に植えられたイチョウの木は黄色と緑のグラデーションがかった色合いを見せている。
以下略



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