過去ログ - やすな「やらないとこっちから噛むぞおおおお」
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2:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:33:57.62 ID:T0P1NCyF0
「ごめんね、ソーニャちゃん」

私の位置からでは、俯くやすなの表情は分からない。
しかし、垂れ下がる前髪の隙間からは、やすなの白い歯が電灯の明かりを映していた。

以下略



3:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:34:36.88 ID:T0P1NCyF0
肩に回したやすなの腕はあまりにも冷たく、しっかりと手を握ろうが十分な熱は感じられない。
一方で吐息は荒く、肩での呼吸が大きくなっている。とはいえ、今までの戦闘や逃走劇を繰り広げたの私の身体も対して差は無いだろう。
このやすなを支えながらの移動は非常に堪えるものがあり、まるで全身の間接に鉛が押し詰まっているかの如く、身体が言うことを利かなくなってきている。

それでも一歩、また一歩と地面を蹴った。
以下略



4:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:36:18.48 ID:T0P1NCyF0
「ソーニャちゃん。なんだか、痛くなくなってきたかも。楽になってきたよ。さっすが私だね、丈夫さだけには自信があるから」

流石だな、その台詞が喉で詰まったきり出て来ない。
今口を開けば、心ない言葉が心配を押しのけて、やすなを傷つけてしまいそうで。
どこまで私は、何というか。不器用なんだろう。認めたくはないが。
以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:36:55.80 ID:T0P1NCyF0
「ちょっと待ってろ」

やすなを壁にもたれさせ、私はこの路に面したドアノブを手当たり次第に引いていく。
試みて三つ目の扉には鍵が掛かっておらず、その隙間から内部を視認する。天井の蛍光灯がちらちらと明暗を繰り返しているから、電気は生きているのだろう。見たところ奴等の姿もなければ気配もない。
随分と古ぼけた低階ビルではあるが、その方がかえって都合が良い。こんなところに逃げ込む物好きはそういないだろう。
以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:37:27.13 ID:T0P1NCyF0
私は再びやすなに肩を貸し、ビルの中へと足を踏み入れる。
すぐに逃げられる様に、侵入口でもある裏口の鍵は掛けないでおく。外から侵入するには扉を引く必要がある。もし奴等に扉を引くといった知能が備わっていたとしたら、もはや鍵を掛けようが掛けまいがおしまいだ。
とにかくやすなを休ませたかった。無理をしてまでも浮かべる笑顔を、これ以上見ていられる自信がない。

休める部屋を探しながら、私達は慎重に進んでいった。
以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:38:25.07 ID:T0P1NCyF0
何してんだ、私。奴等に聞かれたらどうする。

普段では有り得なかったミスに、想像以上に焦っている事を痛感させられる。私自身隅々まで気を張り巡らせているつもりが、どうにも感覚が鈍い。

そんなのだから、やつらにやすなが。
以下略



8:名無しNIPPER[sage]
2015/12/01(火) 18:38:31.42 ID:vKfchS9wo
素晴らしい期待


9:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:38:52.56 ID:T0P1NCyF0
「くそっ!!」

こんなことしても、何も変わらないのは私が一番分かっているはずなのに。非合理的な行動は、目的の達成を邪魔するだけ。
合理的な理想と非合理的な感情が、私の中でねじれ、分かれては、絡み合う。
ぎりぎりとこめかみを膨らませながら振り向くと、少しだけ扉が開いて、やすなが重たげな顔だけ覗かせた。
以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:39:27.99 ID:T0P1NCyF0
またしても様々蹴飛ばしそうになる衝動を堪えながら物々の山を目でなぞっていると、銀の棚々の隙間に不似合いな木目が見えた。
なんとか隙間から手を伸ばし引き抜くと、その木目は取っての付いた箱であり、金具の付いた前面には赤い十字が描かれていた。

「それって」

以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:40:00.35 ID:T0P1NCyF0
「少し、しみるぞ」

私は消毒液のスプレーヘッドもろとも外し、液体としてやすなの傷口に振り掛けていく。

「……っ」
以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2015/12/01(火) 18:40:33.28 ID:T0P1NCyF0
「ごめんね。迷惑掛けちゃって」
「……そうだな」

普段と変わらないやすなの声。ある種の鬱陶しさを含んだ黄色い声。
この薄暗い部屋にはひどく場違いで、くすんだ白い壁紙に吸収されることなく、部屋を転々と反響しているように聞こえた。
以下略



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