1:名無しNIPPER[saga]
2015/12/26(土) 01:37:53.91 ID:rZ9Qs5coo
「この世の果てに連れていって欲しいな」
唐突に先輩が、そんなことを言いだした。
僕は飲みかけのオレンジジュースを机の上に置くと言葉を返す。
「何処ですか、それ」
「行ってみれば分かるよ、きっと」
先輩がオレンジジュースを一口しながら一言。
いつもの戯言ならば、そのまま聞き流してしまってもよかったのだが。
なんだか今日の先輩は雰囲気が違う気がした。
「ね、連れていってよ」
「自転車で行ける距離ですか?」
滑稽な返答だ、と僕は自分で思った。
自転車で行ける距離かどうかなど関係ないだろうに。
「行けるよ、きっと行ける」
悪戯っぽい子供の様で、何もかもを悟った聖人の様でもある先輩の笑顔。
僕の視線はそんな先輩の笑顔に釘付けになってしまう。
「さ、連れ出してよ王子様」
「……」
差し出された先輩の手を握る。
想像していたよりも温かい先輩の手。離したらそのまま消えてしまいそうな先輩の手。
「……エスコート致します、お姫様」
「うむ、くるしゅうない」
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