1:名無しNIPPER[saga]
2015/12/26(土) 01:37:53.91 ID:rZ9Qs5coo
「この世の果てに連れていって欲しいな」
唐突に先輩が、そんなことを言いだした。
僕は飲みかけのオレンジジュースを机の上に置くと言葉を返す。
「何処ですか、それ」
「行ってみれば分かるよ、きっと」
先輩がオレンジジュースを一口しながら一言。
いつもの戯言ならば、そのまま聞き流してしまってもよかったのだが。
なんだか今日の先輩は雰囲気が違う気がした。
「ね、連れていってよ」
「自転車で行ける距離ですか?」
滑稽な返答だ、と僕は自分で思った。
自転車で行ける距離かどうかなど関係ないだろうに。
「行けるよ、きっと行ける」
悪戯っぽい子供の様で、何もかもを悟った聖人の様でもある先輩の笑顔。
僕の視線はそんな先輩の笑顔に釘付けになってしまう。
「さ、連れ出してよ王子様」
「……」
差し出された先輩の手を握る。
想像していたよりも温かい先輩の手。離したらそのまま消えてしまいそうな先輩の手。
「……エスコート致します、お姫様」
「うむ、くるしゅうない」
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2:名無しNIPPER[saga]
2015/12/26(土) 01:44:19.40 ID:rZ9Qs5coo
「暑くないですか?先輩」
荷台へ声を掛ける。
「んー、暑いよ。すっごい暑い」
3:名無しNIPPER[saga]
2015/12/26(土) 01:52:10.75 ID:rZ9Qs5coo
「ねぇ」
「はい、なんでしょうか」
木陰で佇む僕と先輩。
4:名無しNIPPER[sage]
2015/12/26(土) 01:52:40.91 ID:rZ9Qs5coo
書き溜めないのでマイペース更新
長いか短いかも決まってないです
ではまた
5:名無しNIPPER[sage]
2015/12/26(土) 17:09:32.09 ID:vSdakRiu0
乙
6:名無しNIPPER[saga]
2015/12/27(日) 19:04:59.06 ID:2n7j/CLko
「おいしいね」
「はい、おいしいです」
アイスを舐めながら並んで歩く僕と先輩。
7:名無しNIPPER[saga]
2015/12/27(日) 19:24:30.66 ID:2n7j/CLko
「あー、おいしかった」
先輩はアイスを舐め終わるまでに5、6回ほどおいしいを口にした。
決して、このアイスが特別おいしいわけではないと思う。
名残惜しそうにアイスの棒を舐める先輩。
8:名無しNIPPER[saga]
2015/12/27(日) 20:15:07.89 ID:2n7j/CLko
「キミは海、よく来るの?」
「いえ、ほとんど。海に繋がってるかどうかもうろ覚えでした」
海水がギリギリ届かない辺りの波打ち際に立つ先輩。
9:名無しNIPPER[saga]
2015/12/27(日) 21:11:58.15 ID:2n7j/CLko
「……あ」
はしゃぎ気味に水音を立てていた先輩の身体がぐらりと揺れた。
僕の視界の中でゆっくりと傾いていく先輩。
続いて大きな水音。
10:名無しNIPPER[saga]
2015/12/27(日) 21:40:58.90 ID:2n7j/CLko
とりあえず波打ち際から避難してきた先輩と僕。
日陰にいても寒いだけなので日向に並んで座る。
この陽射しの強さだ、しばらくこうしていれば乾いてくれそうなものだが。
「……っしゅん」
11:名無しNIPPER[sage]
2015/12/27(日) 21:44:49.33 ID:2n7j/CLko
つづく
12:名無しNIPPER[saga]
2015/12/29(火) 12:54:45.64 ID:F1HAyKSGo
「本当に大丈夫ですか、先輩」
「大丈夫だってば。心配性なんだから」
服からぽたぽたと雫を垂らせながら歩く僕と先輩。
13:名無しNIPPER[saga]
2015/12/29(火) 12:59:50.38 ID:F1HAyKSGo
「……んっ……ぐ」
「……先輩、それは?」
言ってからまぬけな質問をしたものだと自分で思った。
14:名無しNIPPER[saga]
2015/12/29(火) 13:14:00.70 ID:F1HAyKSGo
「さ、行こ」
「あの、先輩」
「ん?」
15:名無しNIPPER[saga]
2015/12/29(火) 14:05:39.25 ID:F1HAyKSGo
海岸線沿いを走る僕と先輩。
照り付ける太陽のおかげで僕の靴はすっかり乾いていた。
きっと先輩の服や髪も同じ状況なのではなかろうか。
靴と違って服や髪だと状況が全く同じとは言い難いだろうが。
16:名無しNIPPER[sage]
2015/12/29(火) 14:14:55.99 ID:F1HAyKSGo
続く
17:名無しNIPPER[sage]
2015/12/29(火) 15:54:56.21 ID:X9mxWsin0
おつ
18:名無しNIPPER[saga]
2015/12/30(水) 23:36:34.30 ID:MCqTtFHIo
水平線へ夕日が沈んでいく。
その様子を僕と先輩は並んでみていた。
凄く綺麗な光景だ。
もっと楽しむ余裕があればなおよかったのだが。
19:名無しNIPPER[saga]
2015/12/31(木) 00:21:39.11 ID:4lxiKfono
「あはは、くすぐったいよ」
意に介する様子の無い先輩。
半分ほど沈んだ夕日が僕達の影を伸ばす。
先輩は少し目を細めて僕を見つめている。
20:名無しNIPPER[saga]
2015/12/31(木) 00:34:14.39 ID:4lxiKfono
「……」
「……」
先輩は何も言わない。
21:名無しNIPPER[saga]
2015/12/31(木) 01:00:27.52 ID:4lxiKfono
「……んぐ」
先輩が薬を飲んだのを確認してから自転車をこぎ始める。
人気の無い海岸沿いは薄暗くて、明かりと呼べるものはぽつぽつと立った街灯と僕の自転車から伸びるライトの明かりだけ。
普段通っている道はとうに通り過ぎてしまって、今は道なりに道を進んでいる状態だ。
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