過去ログ - 結衣「うたかた花火」 【俺ガイル】
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64: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2016/04/13(水) 01:15:48.60 ID:ZBNG2Zf6o
鍵はヒッキーが持っていたようで、かかっていた鍵を開いて中へ入った。

「……珍しいね。ここにあたしとヒッキー二人なんて」

「そうか? 一色の時とかあったろ」
以下略



65: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2016/04/13(水) 01:16:14.63 ID:ZBNG2Zf6o
「な、何かな?」

そしてわざとわからないフリをする。こうなることはわかっていた、だから、せめて最後まであたしらしくいたいとずっと思っていたんだ。

「俺は――」
以下略



66: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2016/04/13(水) 01:16:41.19 ID:ZBNG2Zf6o
「……マジかよ」

「うん、マジ」

あたしがそう返すとヒッキーは掛ける言葉が見つからないみたいで、ただあたしの顔を申し訳無さそうに見つめる。見てくれなくても、ヒッキーは優しいんだ。
以下略



67: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2016/04/13(水) 01:17:16.86 ID:ZBNG2Zf6o
姿が目に入ったらそれだけで嬉しかった。

声が聞こえたら無意識にそっちの方へ耳を傾けていた。

話しかけられたらもうその日一日幸せだった。
以下略



68: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2016/04/13(水) 01:17:45.43 ID:ZBNG2Zf6o





以下略



69: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2016/04/13(水) 01:18:25.30 ID:ZBNG2Zf6o
あたしが叫んだその言葉はまだ春になりきれない空気を振動してヒッキーに伝わる。

そして弱まった振動はやがて消えて、部室内に静寂だけを残した。

すると小さく、何かが床を打つ音がした。
以下略



70: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2016/04/13(水) 01:18:51.69 ID:ZBNG2Zf6o
見慣れた廊下を必死に走って教室に入ると、そこには優美子の姿があった。

「結衣!? どうしたの!?」

あたしの様子に面食らった優美子は心配そうな声であたしに歩み寄ってくる。
以下略



71: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2016/04/13(水) 01:19:17.86 ID:ZBNG2Zf6o
 三度目の夏の日。

あたしの足がたどり着いた場所は、昔ヒッキーと一緒に花火を見たベンチだった。

あの頃よりも若干古くなったように見える背もたれに、かつての二人の姿を思い浮かべる。
以下略



72: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2016/04/13(水) 01:19:54.99 ID:ZBNG2Zf6o
するとその時、赤い光が辺りを包み込み、少し遅れて重い音が押し付けられるように耳の奥にまで響いた。

驚いて振り返ると消えかけのさかさまのハートが真っ黒な夜空に浮かんでいた。

本当はあのハートだってちゃんとした方向に打ち上げたかったはずなんだ。でもほんの少しの違いのせいで無様な結末を迎えてしまった。
以下略



73: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2016/04/13(水) 01:20:21.93 ID:ZBNG2Zf6o
一つ、花火が打ち上がって空が白く染まり、辺りが一気に空からの灯りで照らされる。

「……ああ、そういうことなんだ」

その一瞬の灯りで、ようやくあたしはそれまで求めていたものが見えた気がした。
以下略



74: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2016/04/13(水) 01:24:36.37 ID:ZBNG2Zf6o
もうほどんど見えなくなってしまった二人が座るベンチに背を向け、元来た道を再び歩み出す。

今となってはもうここには誰もいないけれど、来られてよかった。

次に来た時にはあたしにあの二人の姿を見ることはできないだろう。
以下略



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