7:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 08:39:35.79 ID:p8s59x6z0
「本当にお疲れさま泰葉。」
「ありがとうございます。ここでのステージだけが心残りでしたから…。」
アイドルになって少ししたころ、泰葉はこのテーマパークでのライブイベントに参加したことがあった。
このころは精神面でアンバランスな状態になっており笑顔でステージをやりきることができなかった。僕はこのある種の失敗は長期的視点でいえば決してマイナスではないと思ってるし、泰葉にもそれは伝えた。
しかし「観客のみなさんにとって一つ一つのステージは唯一無二のものなんです。」と泰葉は言った。だから過去の失敗そのものは取り消せなくとも、せめて…ということでラストステージをここでおこなうことにしたのだ。
8:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 08:40:26.07 ID:p8s59x6z0
「撤収が終わったら迎えに行くから楽屋で待っててくれないかな。」
「分かりました、待ってますから…。」
少し頬を染めてそう言った。この10年で泰葉は背こそあまり伸びなかったが、だいぶ雰囲気は大人っぽくなっていた。髪型の変化が一番大きい。子役時代からあまり変えてなかったという前髪ぱっつんをやめて、肩くらいまで髪を伸ばしていた。
でも目もだいぶ変わったと思う。こう官能を感じる大人っぽい艶やかさをまとっているというか…。
「プロデューサー?」
9:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 08:41:05.50 ID:p8s59x6z0
10年前、泰葉と僕は互いの気持ちを確かめ合った。僕は周囲に秘密にしてつき合ってしまえばいいと思った。でも泰葉はそんなことはできないと断言した。ファンに対して嘘はつきたくないと。
それでも僕は諦めきれなかった。彼女と一緒にいたいと思った。それに泰葉だって気持ちは同じなのだ。だったらどうして諦められるだろう。
そうやって粘り続けてやっと引き出したのだ。
「私のアイドル人生が終わるまで待っていてくれるなら…」
10:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 08:42:57.19 ID:p8s59x6z0
「お待たせ、泰葉。」
「お疲れさまです、プロデューサー。」
どことなく堅い口調で言葉をかわす。互いにこれからどうするか考えているからだろうか。
「あのさ、泰葉」
だったら僕の方から行動を起こそう。
11:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 08:43:40.99 ID:p8s59x6z0
2人で光の中を歩く。人工の明かり、偽物の星だけれど行く手を照らすには十分だ。
「出会ったときからずっと、凄いなあって思い続けてきたんだ。決して綺麗事だけじゃないこの世界で希望を諦めずに進み続けた泰葉のこと。」
隣で泰葉は前を向いていた。
「その尊敬の気持ちがいつから恋心になったのかは今ではもうよく分からないけれど、この10年色あせることはなかったよ。」
泰葉は静かに耳を傾けている。
12:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 08:44:34.44 ID:p8s59x6z0
噛んだ…。噛んでしまった…。この状況で。
ショックと自己嫌悪で膝をついてしまう。
そんな僕を見て泰葉はなんだか懐かしそうな顔をしていた。
「ねえ、プロデューサー?私をアイドルにスカウトしたときのことおぼえてますか?プロデューサーこんなふうに言ったんですよ。『僕にも正直なところアイドルがどんな存在なのか確信を以てもって断言することはできない。でもだからこそその答えを見つけたい。一緒に理想のアイドルをさがしましぇんか?』って。そのときも噛んでたんですよ。」
プロデューサー緊張してたから覚えてないでしょうけどと笑顔で言った。
13:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 08:45:03.83 ID:p8s59x6z0
「そんな不器用でまっすぐなあなたと一緒だったからこそ私はアイドルを続けることができたんです。だから私と…あれっ?」
泰葉の目から涙がこぼれていた。
14:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 08:46:03.39 ID:p8s59x6z0
「だって私嬉しいんですよ。ずっと待っててくれて。10年も待っててくれるなんて思ってなかったんだから。だってどう考えたってあり得ないでしょう?10年も告白を待って、それでも一緒にいてくれるなんて。」
その涙は止まらなかった。
「なんで待ってたの!?こんなわがまま普通真に受けないでしょ!?私が裏切ったらどうするつもりだったの!?」
なんか挙げ句の果てに怒られてしまった。理不尽である。
ちょっとだけ不満が頭をよぎると、今度は抱きつかれた。
15:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 08:46:56.32 ID:p8s59x6z0
「すいませんでした…。告白をめちゃくちゃにしてしまって…。」
「いやそもそも僕が噛んだのが悪いわけだし…。」
泰葉がひとしきり泣き終わると今度は反省会みたいな雰囲気になってしまった。夜空の下2人でベンチに並んで座っていた。なぜこうもうまく行かないのか。
「あっ。そうだ。」
僕はあることを思いだし、スーツのポケットを探る。そして小さな黒い箱を取り出す。
16:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 08:48:19.84 ID:p8s59x6z0
「はい、プロデューサー。いえ、ーーーさん。」
その日僕は『岡崎泰葉のプロデューサー』を終わりにした。
17:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 08:49:23.11 ID:p8s59x6z0
本編は以上です。少し休憩後おまけを投下します。
18:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 08:58:40.93 ID:p8s59x6z0
後日談投下します。
19:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 08:59:25.90 ID:p8s59x6z0
岡崎泰葉ラストステージ&告白&プロポーズから半年の月日が流れていた。
泰葉はアイドルだけでなく芸能活動を引退していた。それなので今は専業主婦となっていた。
泰葉なら女優としてもやっていけるだろうにと思ったが本人いわく「今はこれでいいんです。」とのこと。ちょっと残念な気もするが本人が納得しているならそれでいいだろう。
20:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 09:00:09.87 ID:p8s59x6z0
そんなある日の朝食。食卓の上には白いご飯に味噌汁、焼き魚そして納豆がのっていた。やっぱり日本人ならこれだよなあ〜。
ところで泰葉かなり料理が得意だった。なんでも葵に教わったらしい。
そんな彼女は目の前で同じく朝食を食べていた。女性らしく少しづつご飯を口に入れていた。ああ綺麗な唇してるなあ。
「ーーーさん?」
また見とれていた…。
21:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 09:00:46.98 ID:p8s59x6z0
玄関で泰葉が声をかけてきた。
「今日は早く帰りますか?」
「うん。最近はそんなに忙しくないから。」
「だったらお願いしてもいいですか?」
「どうしたの?」
22:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 09:01:25.29 ID:p8s59x6z0
泰葉は顔を真っ赤にしていた。
きっと僕の顔も同じだったろう。
だから首を縦に振ることしかできなかった。
今でも彼女はまっすぐなのだ…。
23:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 09:02:36.15 ID:p8s59x6z0
以上です。
24:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/17(日) 09:23:58.71 ID:p8s59x6z0
html化依頼してきます。
25:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[sage]
2016/01/17(日) 09:31:30.82 ID:mwT4StzSO
乙
いい雰囲気のSSだ
26:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[sage ]
2016/01/17(日) 10:32:08.47 ID:UkTUmyx7o
乙!
27:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[sage]
2016/01/17(日) 12:24:28.48 ID:1HKrmseOo
読みにくい……行間空けよう
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