101:名無しNIPPER[saga]
2016/02/07(日) 00:58:23.23 ID:RMEEmtti0
「__うん、いいよ。あんたが死んだくれたら。自殺はやめる。死んでくれたら、だけどね。どうせ無理!あなたはお母さんじゃないもん!」
「ナイフを貸してくれ。それで死ぬから」
人の心臓は体の中央より少し左にある。
だから、その逆。
体の中央から少し右を刺せば、心臓に刺したと言うインパクトはそのままに、ギリギリ致命傷ですむはずだ。
102:名無しNIPPER[saga]
2016/02/07(日) 00:59:17.18 ID:RMEEmtti0
とはいえ、それが本当に致命傷だけで済むのかどうかは解らないし、自分で自分を傷つける恐怖は、尋常ではないけれど。
舌をかみきる少女を救うのだ。
僕がナイフぐらいで怯えてちゃ話にならない。
しかし、更に『話にならない』ことを、彼女は言った。
「ナイフなんて持ってないわよ」
103:名無しNIPPER[saga]
2016/02/07(日) 01:00:03.39 ID:RMEEmtti0
「いや、そんなことは」
「図星。って顔。やっぱりそうだ。死ぬふりだけして、捨て身のヒーローになりたいだけなんだ、あんた」
それもまさしく図星だった。
「いや、そんなことは」
「じゃあ電車で死んで。それか」
104:名無しNIPPER[saga]
2016/02/07(日) 01:00:54.64 ID:RMEEmtti0
『ナイフで自殺なんて、いかにも細工しやすそうじゃない』
普通、自分のために死んでくれるって人に、そんなこと考えるだろうか。
まぁ、そもそも彼女は普通ではないけれど。
彼女は、思ったより人間に失望している。
しかし、やはりそれも当たり前のことなのかも知れない。
105:名無しNIPPER[saga]
2016/02/07(日) 01:01:40.79 ID:RMEEmtti0
「__うん、いいよ。あんたが死んだくれたら。自殺はやめる。死んでくれたら、だけどね。どうせ無理!あなたはお母さんじゃないもん!」
「わかった」
次は受け身を取ろうと思う。
電車相手に、受け身。
焼け石に水も甚だしいが、それで生き残るかも知れないのだ。最悪、植物人間になってもいい。生き残る確率を少しでも上げるのが最も重要。
106:名無しNIPPER[saga]
2016/02/07(日) 01:02:30.90 ID:RMEEmtti0
………駄目か。
体に何かぶつかる感触さえなかった。
焼け石に水どころではなかったようだ。全くの無駄だった。
電車に当たりながらも生き残るというのは無理だ。
しかし、ならばもう打つ手がなくなってしまう。
107:名無しNIPPER[saga]
2016/02/07(日) 01:03:22.18 ID:RMEEmtti0
「…………強いて、言うなら」
「何だ?」
「強いて言うなら、変だな」
「…………何が?」
「あぁ、変だ。ループ物のお約束に則るなら、お前が死を選んだ時点で普通はそこで終わる。その先も続くっていうのは、変だ。違和感がする。こんなに物語らしいことをして置いて、劇的じゃない」
108:名無しNIPPER[saga]
2016/02/07(日) 01:04:13.55 ID:RMEEmtti0
とはいえ、そんな気持ち一つでこの状況は変わらない。
気持ちだけで何かを変えれるような世界なら、そもそも彼女のような存在は生まれない。
その気持ちに見合うだけの何かがなければ。
僕の場合、その何かが見つからない。
『19』『17』『14』『9』『6』
109:名無しNIPPER[saga]
2016/02/07(日) 01:05:10.94 ID:RMEEmtti0
「__うん、いいよ。あんたが死んだくれたら。自殺はやめる。死んでくれたら、だけどね。どうせ無理!あなたはお母さんじゃないもん!」
「わかった」
考えろ。
彼は『変』と言った。
何が変か。あそこまで物語が進んでいながら、僕の死も許されなかったことが、だ。
110:名無しNIPPER[saga]
2016/02/07(日) 01:06:05.95 ID:RMEEmtti0
やっぱりこの物語の終わりは僕の死で、何か別の理由で、僕が死ぬ前に巻き戻っていたとしたら?
何か別の理由。
そんなの、一つしかない。
彼女より前に立ってから、そこで僕は初めて、振り返った。
「………何してる……!」
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