過去ログ - 真「二人の幸せのために」
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55:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 20:49:13.61 ID:XmKtMl4U0

ボクと別れた次の日、雪歩は仕事を休んだ。次の日も。その次の日も。

事務所は雪歩の仕事の穴を埋めたり、各所に謝罪して回ったりで大騒ぎだった。当の雪歩とは一切連絡が取れず、家からも一歩も出てこないという事をプロデューサーから聞いた。

以下略



56:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 20:52:29.65 ID:XmKtMl4U0

ボクと雪歩が別れてから2週間――雪歩が事務所に戻ってきた。

雪歩は皆の前で深く頭を下げて、「迷惑をかけてしまってごめんなさい。」と謝罪した。

以下略



57:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 20:55:39.49 ID:XmKtMl4U0

小鳥さんから聞いたところによると、部屋に閉じこもっていた雪歩を外に連れ出したのはプロデューサーらしい。
日々の業務をこなしながらも毎日雪歩の実家を訪れ、粘り強く家族と交渉し、雪歩の部屋の外からドア越しに説得を重ね、2週間かけて雪歩をアイドルの世界へ連れ戻したのだ。

優しいけど少し頼りない、という印象がプロデューサーにはあったけれど、やる時はやる人だという事が今回の雪歩の一件でわかった。
以下略



58:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 20:57:33.17 ID:XmKtMl4U0

雪歩と事務所ですれ違っても会話の無い日々。例え視線が合ったとしても、次の瞬間には雪歩の視線はボクから逸らされていた。
それが辛くてもボクから話しかけたりはしない。雪歩をあれだけ傷付けたんだ、こんな扱いくらい当然だ、と……自分にそう言い聞かせていた。

ボク達の間に会話が無い事に気が付いた皆に心配されたりもしたけれど、ボクは「喧嘩してるわけじゃないから。」と軽い感じを装って質問を受け流していた。


59:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 20:59:33.51 ID:XmKtMl4U0

そんな日々が続いて2ヶ月ほど経った頃――

ボクは朝早くに目が覚めたので、日課のジョギングを済ませて朝ご飯を食べてからいつもよりかなり早い時間に事務所に顔を出した。

以下略



60:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 21:01:42.11 ID:XmKtMl4U0

部屋の中で二人きりになるのは久しぶりだから少し狼狽える。今までは意識してこのシチュエーションを避けてきたから。
なんて声を掛ければいいのだろう、もう二ヶ月近く話してないから咄嗟に言葉が出てこない。

そんなボクを尻目に、驚いた事に雪歩の方からボクに話しかけてきた。
以下略



61:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 21:05:15.24 ID:XmKtMl4U0

「……どうしたの。今日は早いんだね。」

「うん……。昨日事務所のロッカーに忘れ物をしちゃったからレッスンの前に取りに来たの。そしたら小鳥さんから真ちゃんももう来てるって聞いて……。」

以下略



62:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 21:08:36.44 ID:XmKtMl4U0

「あの時真ちゃんは私のことを大切な友達だって言ってくれたよね……。それなのに私は、真ちゃんに見捨てられるって、その事しか頭に無くて……。恋人の関係じゃなくなるのがどうしようもなく怖くて……別れるのは嫌だって泣き叫んでばかりで、真ちゃんの言葉を全然理解できて無かった。
あの……私達、恋人にはなれなかったけど……友達ではいられないかな…?都合が良いと思われるかも知れないけど、真ちゃんとずっとこのままなんて絶対に嫌だから……。

私と友達として……仲直りしてくれませんか?」
以下略



63:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 21:17:40.91 ID:XmKtMl4U0

差し出された右手を見ると同時に涙で視界が歪んだ。
ボクは雪歩の手を両手で掬うようにそっと握る。

「雪歩、ごめん。本当にごめん。ボクは……」
以下略



64:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 21:20:40.26 ID:XmKtMl4U0

雪歩と以前の様な関係に戻るまでに、それほどの時間はかからなかった。勿論、友達としての関係だ。それを二人は望んでいたのだから……友達に戻るのはそう難しいことではなかった。

友達として適切な距離、適切な会話、適切な接し方。何もかもが元通りになった。恋人としての時間なんて無かったかの様に振舞うボク達。
それを悲しく思わないわけではなかったけれど、あの時に出来た傷はまだ生々しく胸に残っていて、すぐに触れることは躊躇われた。


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