1:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 14:42:53.93 ID:Z50vb1jJ0
※アイドルマスターシンデレラガールズ、南条光のR18ssです。苦手な方はご遠慮下さい。
「ごめん、待ったか!?」
床を叩く小刻みな音が昼下がりの喫茶店に響く。
軽快な足音の発信源は、俺の担当アイドルの南条光だった。
「合流するだけだから急かしてはいないが、どうした? いつもならもっと早いだろ」
「ええと、収録が長引いて……」
「その時は俺もいただろ。俺がちょっと外回りに行ってる間に何があった?」
「……子供の風船を取ってあげて、おばあちゃんの荷物を持ってあげて、それから道案内と猫探しをして、それから汚れたお地蔵様をお掃除してだな、それから、それから――」
彼女はまくし立てるように、自由行動中に達成した人助けの武勇伝を語り始めた。
南条光は世にも珍しいヒーローアイドルというジャンルを開拓している。
『頑張れ』『負けるな』と、まるで特撮ヒーローの主題歌のような勇壮な曲を発表するボーカリスト活動がその中心だ。
また最近では、ヒーローによくある『変身』をテーマとし、受験生を募集する塾や、ダイエット食品のコマーシャルでも成果を挙げている。
両者とも『理想の自分になるための憧れの力で、怠惰な弱い己に打ち勝つ』活動であり、それが日頃光が口にしてるヒーロー観と一致してたのだ。
そういうことで、彼女は子供世代や親世代、孫を持つ老人世代に支持されるボーイッシュアイドルと評価されている。
「ともかく、怪我が無いならいいんだが……ヒーローは遅れてやってくる、はもう無しにしてくれよ。気が気でない」
「う……ごめんなさい」
先ほどのお調子者ぶりとは打って変わって、しょんぼりとうなだれた。心なしか、両耳のあたりの外ハネも沈みこんでる気がする。
「……いやこっちこそ、意地悪な聞き方をしてすまなかった」
「ううん! 改めて、遅れてごめんなさい!」
一転、少年のようにくしゃっと笑った。ころころと変わり続ける表情は、いつまで見てても飽きがこない。
互いに購入したドリンクを飲み干してから、その日のスケジュールを整理した。
もっとも、今日の仕事は午前中で終わってるので、午後からは完全なフリータイムだ。
明日からの仕事の話も早々に終えて、二週間ぶりの一緒の時間の使い方を決める作戦会議を始めた。
「お仕事と人助けをいっぱい頑張った光を賞して……ステーキ、食いたくないか?」
「おお、とっても素敵だな!」
「ツッコまないぞ。ディナーまでの間、何かあるか?」
質問の途中、光は腕時計に眼をやった。
彼女の友人の池袋晶葉が丹誠込めて作り上げた、極めて頑丈なブレスレットだ。
晶葉もまたアイドルで、現在別の現場で仕事に勤しんでいる。
「んと……今から動けば、五限の途中から間に合うな。車を飛ばしてもらえないか?」
「まじめだな、光は」
「ヒーローは文武両道じゃないと、だからねっ!」
「ならなおさら、頑張り屋の光にご褒美をあげないとな。黒毛を食べていいぞ、黒毛」
「やったぁっ♪」
「喜んでくれたみたいで何よりだ。……食事シーンごっこ、楽しみにしててくれよな」
俺の最後の言葉を耳にした瞬間、光の表情が強ばった。そしてかぁっと紅潮し、恥ずかしそうに小さくうなずいた。
SSWiki : ss.vip2ch.com
25Res/45.86 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。