517: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/08/28(日) 15:17:15.70 ID:jS9uIrpkO
永井は手すりから身体を離した。さきに行くぞと胡桃に声をかけると、胡桃はもうすこしここにいると言った。屋上のドアを開けると、永井のちょうど目の前にドアノブに手をかけようとしたら、向こう側から勝手に開いたので手を引っ込めた美紀がいた。
美紀「先輩」
永井「直樹さんか」
美紀は手にペンキの缶持っていた。ドアのすぐ横には、美紀が置いたであろう工具箱と薄い木材が四枚重ねてあった。
永井「墓を見にきたの?」
美紀「はい。屋上も火がまわったそうなので、もしなにかあったらと思って」
永井「どちらも焦げ跡はあったけど、原型はとどめてたよ」
美紀「そうですか。よかった。じゃあ、ペンキだけでよさそうですね」
永井「恵飛須沢に手伝ってもらったら? あいつ、ヒマそうにしてるし」
美紀「くるみ先輩も屋上にいるんですね」
永井「ああ」
美紀「くるみ先輩は……」
美紀はそこで言葉を切った。
美紀「いえ、やっぱり大丈夫です」
永井「そう」
永井はそれで会話を終わらせると美紀の脇を抜け、階段を降りようとした。
美紀「永井先輩」
美紀が永井の背中にむかって声をかけた。
永井「なんだ?」
美紀「太郎丸を埋めたときに言ったこと、憶えてますか? わたし、あのときと変わってませんから」
言いおわり、美紀はドアを閉め屋上に向かった。永井は美紀を見送ってから、静かに階段を降りていった。
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