507: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/08/28(日) 15:03:31.81 ID:jS9uIrpkO
ブルーシートを焦げ跡の残る一台のトランクにおいた永井は、事故現場そのままの空間でなにかを探すようにして腰をかがめ、うろうろしていた。胡桃が永井のいるところまで歩いているとき、目的のものを見つけた永井はむかってくる胡桃にブルーシートを渡すようにいった。
ブルーシートを手にした胡桃が永井に近寄る。永井が発見し見下ろしていたものは、左足を負傷した男の死体だった。死体には胸啌をつらぬく人間の腕ほどの大きさの穴が空いていて、砕けた頭蓋から内容物が放射状に飛び散っていることが確認できた。永井はブルーシートを死体の横にひろげ反対側にまわり、男の装備から使えそうなものを回収すると(空の自動拳銃一丁、予備の弾倉四つ、拳銃型の麻酔銃一丁、予備の麻酔ダート八本、無線機一個、自動拳銃と弾倉と麻酔ダートが収まる弾薬ポーチ一つ)、シートの上にのるように死体を転がした。
508: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/08/28(日) 15:04:20.47 ID:jS9uIrpkO
永井がトランクを閉めた。あった、と過去形が用いられたことに、胡桃は沈黙で同意した。屋上から、悠里が顔をのぞかせている。表情は見えなかったが、きっと自分と同じような表情をしているんだろうな、と胡桃は思った。胡桃は悠里にむかって手を挙げ、とりあえず大丈夫だ、ということを示した。悠里は駐車場にいる胡桃にもわかるように大きくうなずくと、屋上の手すりから離れた。
うしろで車のエンジンがかかる音がした。永井は運転席に座っていたが、ドアが開いたままになっている。
509: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/08/28(日) 15:06:00.91 ID:jS9uIrpkO
−−学園生活部
由紀「……」
510: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/08/28(日) 15:09:16.61 ID:jS9uIrpkO
由紀「みーくん、パス」
美紀「え?」
511: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/08/28(日) 15:10:19.45 ID:jS9uIrpkO
−−夜・地下一階シャッター前
悠里「ゆきちゃん、もう寝た?」
512: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/08/28(日) 15:11:33.36 ID:jS9uIrpkO
胡桃「ヘリのとこで拾ったんだ」
悠里「この印の場所……たしかパンフレットにあったわね」
513: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/08/28(日) 15:12:58.34 ID:jS9uIrpkO
永井は立ち上がり、そそくさと倉庫の方へ戻っていった。
美紀「……」
514: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/08/28(日) 15:14:08.49 ID:jS9uIrpkO
−−翌日・屋上
胡桃は手すりに背中を預けながら、屋上に腰をおろし空を見上げていた。この季節、あと数時間もすれば、薄く広がる雲と空色のコントラストが、だんだんと強まる日差しの光量の強い白色に消えてゆくだろう。だがいまはまだ、青い空に浮かぶ雲のゆくえを気ままに堪能できる時間帯だった。綿菓子を思わせるふくらみのある巨大な雲が、上空で乱れる大気のせいで、空に横たわる一本の河のように形を変えた。
515: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/08/28(日) 15:15:19.25 ID:jS9uIrpkO
永井「気づいてると思うけど、体温と痛覚に異常がある」
胡桃「……」
516: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/08/28(日) 15:16:10.57 ID:jS9uIrpkO
胡桃「もし、あたしになんかあったらさ、みんなのこと頼んでもいい?」
永井「そのときの状況次第だ。集団行動にメリットがあると判断すれば、僕は彼女達についていく」
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