1: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2016/03/21(月) 19:23:39.50 ID:YEu02TvIO
「ふう……。今日もレッスン、疲れたな……」
ベッドの上で横になりながら、黒髪の少女は呟く。
「アイドル……かぁ……」
まるで他人事のような言い方は、当然、自分の状況に向けられたものだ。
そしてその口調からは、自分の飛び込んだ環境への戸惑いが滲み浮かんでいる。
「明日も頑張ろう……」
小さな声を残して眠りについたこの少女――小日向美穂――は、つい数日前まではただの、養成所に通う、アイドルを夢見る1人に過ぎなかった。
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2: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2016/03/21(月) 19:24:58.15 ID:YEu02TvIO
とは言っても、基本的にネガティブな思考回路を持ち合わせている彼女としては、アイドルにはなれないまでも、せめて自身のあがり症の克服に繋がれば……、という認識ではあったのだが。
田舎から上京して養成所に通い始め、なんとかレッスンをこなす日々。
共に励む仲間は、ある者は事務所に所属が決まり、ある者は諦めて養成所を去る。
3: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2016/03/21(月) 19:26:05.99 ID:YEu02TvIO
ある日、美穂が養成所に行くと、見知らぬ少女がトレーナーと話をしていた。
あの書類には見覚えがある。確か、ここに入る際に書いたものだ。ということは、新しい仲間かもしれない。
4: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2016/03/21(月) 19:27:03.01 ID:YEu02TvIO
『気が合う』という言葉はこういう時に使うんだろうな。
卯月と出会ったその日には、美穂にはそのような思いが芽生えていた。
まだ顔を合わせて数時間。卯月が初めてのレッスンを済ませて、その難しさに驚嘆の声をあげた後、一緒に帰る道で。
5: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2016/03/21(月) 19:27:53.38 ID:YEu02TvIO
何よりもその笑顔だ。
美穂は初対面の人間がとても苦手である。いや、初対面の人間が大得意ですなどという奇特な者がいるとは思えないのだが、その中でも格別に。
いわゆる『人見知り』という類の性格であり、自覚もしているのだが、卯月との会話にそれが現れることはなかった。
6: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2016/03/21(月) 19:28:39.27 ID:YEu02TvIO
同い年の2人は、それから毎日のようにレッスンを共にし、会う日はめいっぱい話し、会わない日は電話で話すことがほとんどであった。
会話の内容はとりとめのない、少女のよくある話。
7: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2016/03/21(月) 19:29:24.12 ID:YEu02TvIO
順調に2人がレッスンを重ねていったある日、美穂がいつものように養成所へ行くと、トレーナーと見知らぬ男性が話していた。今日のレッスンを見学するらしい。
いつもなら卯月に、誰なんだろうね?などと話しかけるところであったが、学校の行事でお休みのようだ。
8: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2016/03/21(月) 19:30:30.39 ID:YEu02TvIO
…………
「もしもし、卯月ちゃん、明日、レッスン来るよね?」
9: ◆i/Ay6sgovU[saga]
2016/03/21(月) 19:31:28.65 ID:YEu02TvIO
この日、レッスンを見学していた男性は、芸能プロダクションのプロデューサーをしている人であった。このプロダクションは、規模は小さいながらも、有力なタレントを排出している。しかし、これまでの所属タレントの平均年齢は決して低くなかった。
そのプロダクションが、この度、アイドル部門を設立し、ファンの層を拡大する戦略を取ることになった。それに伴って、各地の養成所などを見て回っているらしい。
美穂はそのプロデューサーにスカウトをされた。
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