41: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 02:09:02.05 ID:vxIFxQsM0
ボーカルレッスンを行ったときも、俺は開いた口が塞がらなかった。
彼女は突き抜けるようなハイトーンから、しっとりと艶のある歌声まで、自在に声色を変えることができた。
声量も、音の伸びも、どれをとっても文句はなかった。
42: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 02:11:56.42 ID:vxIFxQsM0
ひとたびモデルの仕事をこなせば、新人であるにも関わらず紙面一ページを丸ごとかっさらった。
感情を表に出さず、含みを持たせた発言は、強烈な印象を周囲に振り撒いた。
期待の新星として取りざたされた彼女に関する噂は、瞬く間に全国に広がった。
43: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 02:15:41.50 ID:vxIFxQsM0
世間は面白いように彼女に食いついた。
信じられない数の仕事の依頼が彼女に舞い込み、その中には企業CMのオファーまであった。
44: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 02:17:21.73 ID:vxIFxQsM0
幾つかの色が混ざった感情を持て余しながら、ある日のこと。
P「高峯」
俺はレッスン室から出てきた彼女に声をかけた。
45: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 02:18:35.52 ID:vxIFxQsM0
恵まれた容姿に、恵まれた才覚。
彼女は容易に世間に受け入れられ、彼女もまたそれに応じる。それはもう、成功と評して差し支えがないほどに。
それでもまだ、時間を見つけては自主的にトレーニングを重ね、自らを厳しく律する。
46: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 02:21:53.36 ID:vxIFxQsM0
のあ「……私なら大丈夫」
凛と澄ました顔で、彼女が答える。そしてそれはきっと、見栄ではない。
P「駄目だ」
47: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 02:23:35.12 ID:vxIFxQsM0
あっという間に時間は過ぎ、ライブ当日に至る。
観客の動員数は上々だった。
48: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 02:25:09.70 ID:vxIFxQsM0
控室で待機していると、誰かが扉をノックした。
扉を開けると、その先にはまだ高校生ぐらいの女の子が緊張した面持ちで立っていた。
少女の後ろには、彼女の担当プロデューサーらしき女性がにこにこと笑いながら控えている。
49: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 02:27:09.95 ID:vxIFxQsM0
P「そっか、まあとにかくありがとうね。おーい、高峯」
部屋の奥に向かって声を投げかけると、すぐに彼女は現れた。
前川と名乗った少女は、彼女の姿を見ただけで怯んでしまった。
50: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 02:28:36.62 ID:vxIFxQsM0
結果だけいうなら、その日行われたライブに高峯のあは、惜敗した。
51: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 02:29:49.86 ID:vxIFxQsM0
その日、すべてを終えて事務所に帰りついたときには、午後十時をまわっていた。
荷物を置くなり、普段は近寄ることさえしなかったソファに腰掛けた彼女を見て、どう声を掛けたものかと少し悩んだ。
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