8: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 00:14:02.98 ID:vxIFxQsM0
「アイドル、とっても楽しかったんですけど、私じゃきっと、プロデューサーさんの意には沿えないから」
9: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 00:18:32.64 ID:vxIFxQsM0
数時間前に聞かされたセリフがフラッシュバックする。
担当していたアイドルに話があるといって呼び出されて、聞いてみればこれだった。
10: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 00:20:37.48 ID:vxIFxQsM0
彼女をプロデュースしながら、俺は不安になった。
だけど、たった一人、傍で彼女を支えられる俺が逃げ腰になってはいけないと思い直し、弱音は飲み込んだ。
11: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 00:22:22.68 ID:vxIFxQsM0
普通なら中断させるほどのペースで、彼女はレッスンをこなした。
この娘なら、トップを狙えるかもしれない。
そう思えたからこそ、俺はすべてをかけて彼女を応援した。
12: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 00:23:40.62 ID:vxIFxQsM0
このところ、出会った当初に見せてくれた、花のような笑顔を見ることがなくなっていた。
嬉々として聞かせてくれた趣味の話も、ぱったりと途絶えていた。
13: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 00:26:01.46 ID:vxIFxQsM0
自分の靴音だけがいやに響く路地を歩きながら、俺はさっきから同じことばかりを考え続けている。
俺は彼女に、満足な指導やプロデュースを行えていたのか、ということ。
14: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 00:26:26.26 ID:vxIFxQsM0
『私じゃきっと、プロデューサーさんの意には沿えないから』
15: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 00:29:38.60 ID:vxIFxQsM0
彼女はたしかにあのとき、俺の意に沿えないと、そう言った。
暫く愕然として、思わず足まで止まってしまう。
16: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 00:30:25.95 ID:vxIFxQsM0
自分の脈拍が、急にうるさく聞こえてくる。
時折顔を撫でるように吹く夜風が、背筋から急速に熱を奪う。
17: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 00:31:29.12 ID:vxIFxQsM0
どうしてこうなったんだろう。
こんなことがしたかったわけでもないのに。
18: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 00:32:36.20 ID:vxIFxQsM0
その夜は、月が鮮明に見えた。
環境音すらも闇夜に吸い込まれてしまったかのように、辺りは静かだった。
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