3: ◆sDG6cMODAE[sage saga]
2016/03/29(火) 23:08:02.88 ID:55TQ6eys0
でも、いつまでもそんな日が続く訳もなく。
彼が就職する少し前に、一度だけ質問をしたことがありました。
「……恋人は、いるんですか?」
4: ◆sDG6cMODAE[sage saga]
2016/03/29(火) 23:08:35.05 ID:55TQ6eys0
数年後。
私は上京して、古書店を経営する叔父の家で手伝いをしながら大学に進学をしました。
彼とは、彼が就職してから一度も会っていません。
5: ◆sDG6cMODAE[sage saga]
2016/03/29(火) 23:09:03.14 ID:55TQ6eys0
数週間後。
午前の講義がないので店番をしていると、突然彼が現れました。
時計の針は午前十時を少し回ったあたりを指しています。
6: ◆sDG6cMODAE[sage saga]
2016/03/29(火) 23:09:40.73 ID:55TQ6eys0
私は自分の耳を疑いました。
アイドル。
ええ、知っています。
7: ◆sDG6cMODAE[sage saga]
2016/03/29(火) 23:10:13.78 ID:55TQ6eys0
数日後、彼にアイドルになるという旨の返事をしました。
両親たちは、好きなようにしなさいと言ってくれたというのと、彼に対する依存に近い形の信頼が、そう決心させました。
依存と言っても、決して悪い意味ではなく、むしろ彼が今まで見せてくれた景色が魅力的だったからこそ、私は望んでその答えを選んだのだと思います。
8: ◆sDG6cMODAE[sage saga]
2016/03/29(火) 23:10:41.56 ID:55TQ6eys0
この曲の発表を皮切りに、普段の学業に加え、地方への営業や、雑誌の取材、ラジオ・テレビへの出演と次々に仕事が舞い込んできて、忙殺されそうな日々が始まりました。
そんな日々にも慣れ始めた頃には、私はいわゆる『人気アイドル』として、いわゆる有名人になっていました。
彼が見せようとしてくれていた世界は、入口を過ぎると輝かしく華々しいだけでなく、辛く厳しいこともある、でもそれを乗り越え進むことにこそ意味があると、教えてくれました。
9: ◆sDG6cMODAE[sage saga]
2016/03/29(火) 23:11:08.90 ID:55TQ6eys0
私は今、こんなにも幸せです。
貴方からたくさんのものを貰いました。
でも私に返せるものはほとんどありません。
10: ◆sDG6cMODAE[sage saga]
2016/03/29(火) 23:11:47.30 ID:55TQ6eys0
初めは、自覚すらありませんでした。
再会して、置いて行かれたと思いました。
近づきたい、追いつきたいと思いました。
11: ◆sDG6cMODAE[sage saga]
2016/03/29(火) 23:12:21.17 ID:55TQ6eys0
でも、その前に一つ済ませておくことがありました。
「アイドルグランプリ」
年に一度開催される、その名の通りアイドルのNo.1を決めるためのイベント。
12: ◆sDG6cMODAE[sage saga]
2016/03/29(火) 23:12:53.41 ID:55TQ6eys0
それから私は、今まで以上に仕事に全力で取り組みました。
私から彼に贈れるものが、一つでも多いように。
動機は不純かも知れません。
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