過去ログ - 【艦これ】Z3「壁の上でダンスを」
↓ 1- 覧 板 20
1:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 01:28:36.66 ID:1bBR+Rra0
1990年の熱い夏。
深夜、私は鎮守府の執務室にてワープロの電源をいれた。
ワープロは最新式である。景気が無駄にいいせいで現場にも金が降り、めでたく新調することができた。
立ち上がったのを確認すると、フロッピーディスクを挿入する。
「さて、今夜中に仕上げないと…… 終わるかな?」
立ち上がった画面に映る文章は上層部に提出する書類であり、去年一年間の海外滞在について報告するものだ。
今週中に出さなければいけないのだが、まだ初めの一行すら書いていない。
私は書き出しについてすこし考えた後、吸いさしの煙草を灰皿におしつけ、キーボードをたたき始めた。
『1989年 9月28日。私は一人の少女を探して東ドイツにやってきた』
これは、あるひとりの少女とひとつの国の物語である
SSWiki : ss.vip2ch.com
2:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 01:43:40.80 ID:1bBR+Rra0
1989年、9月28日。私は東ベルリン空港へと降り立った。
慣れないドイツ語に戸惑いながらもバスに乗り込み、指定された広場まで行く。
「だれなんだ…… 栗色の髪の小柄な女の子、だよなあ」
3:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 01:57:06.79 ID:1bBR+Rra0
「君が、あの手紙の送り主かい?」
「そうよ」彼女は目深にかぶった帽子を手で持ち上げ、私の顔をじっと見つめた。「あなたが日本の提督さん?」
提督「そうだよ。君が今回手紙をくれた……アンナさん、でいいのかな」
4:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 02:11:17.49 ID:1bBR+Rra0
場所を近くのカフェへと移し、本格的な話に移る。
Z3「手紙は読んでくれたかしら?」
提督「もちろん。私のみならず、大本営のお偉いさんたちはみんな読んださ」
5:名無しNIPPER[sage]
2016/03/30(水) 02:13:24.13 ID:Pe/0i+r+0
続ききたか、期待
6:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 02:28:39.18 ID:1bBR+Rra0
シュタージとは何か。簡潔にいってしまえば東ドイツの秘密警察である。
1986年の時点で5000人ほどのエージェントと国民の一割に及ぶ密告者を持っていた、ナチスのゲシュタポ、ソ連のKGBをもしのぐ規模の組織だった。
その勢いは近年、東ドイツの衰退とともに衰えているといわれるが、それでも恐ろしい組織だということには間違いないだろう。
7:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 02:38:00.93 ID:1bBR+Rra0
◆◆◆
男はシュタージのエージェントだった。それも政府要職などの重要人物を監視するための。妻子はいない。
しかし男は不満だった。なぜ自分のような人間が亡命を企てるいち小娘を監視せねばならないのか。
8:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 02:45:47.42 ID:1bBR+Rra0
◆◆◆
提督「ふう、ふう…… なんとかうまくいったね」
Z3「まさか本当にやるとはね…… よくやったわね」
9:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 02:59:59.04 ID:1bBR+Rra0
提督「さて、今すぐにでも出国できるけど、どうする?」
Z3「いいえ、まだやり残したことがあるわ。まだその時ではない……」
結局亡命日は引き伸ばされることになり、宿を確保する必要が出てきた。
10:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 03:00:48.79 ID:1bBR+Rra0
今夜はここまでです。閲覧ありがとうございます
11:名無しNIPPER[sage]
2016/03/30(水) 07:50:01.00 ID:9I2u/8Puo
これは期待
12:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 15:55:43.95 ID:1bBR+Rra0
3日後、私たちは安宿に落ち着いてい。Z3の話によれば、ここにしばらく滞在する予定だという。
私は黙ってそれの従うこととした。
彼女のやり残したこととはなにか。それは彼女の口から語られることとなった。
13:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 16:06:38.09 ID:1bBR+Rra0
提督「シュタージに、殺された?」
私は思わず聞き返した。
二人以外誰もいない閑散とした食堂を沈黙がつつむ。
14:名無しNIPPER[sage]
2016/03/30(水) 16:24:50.01 ID:HT/09zjl0
imgur.com
imgur.com
imgur.com
imgur.com
imgur.com
15:名無しNIPPER[sage]
2016/03/30(水) 18:57:28.91 ID:0jRmIvuro
>>14
グロ注意
16:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 20:06:00.17 ID:1bBR+Rra0
グロへの注意ありがとうございます
1989年10月。
このひとつきのうちに情勢はめまぐるしく変って行っていたが、
17:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 20:22:40.83 ID:1bBR+Rra0
提督「ともかくトンズラしないと」
私は運転席に乗り込み、彼女は助手席に座った。
宿へと戻る道の途中、私は彼女にずっと気になっていたことを尋ねる。
18:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 20:34:34.65 ID:1bBR+Rra0
10月18日。東ドイツの社会主義統一党の政治局は書記長のホーネッカーを解任し、新たにエゴン・クレンツを書記長の座に据えた。
しかし、そうした上層部の努力にもかかわらず東ドイツの崩壊は止まる気配を見せない。
19:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 20:47:33.88 ID:1bBR+Rra0
◆◆◆
11月9日は木曜日だった。
昼ごろ、誰もが恐れて近寄らないシュタージ本部の前に何気ない様子で一台のトラバントが停車した。
20:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 20:57:50.61 ID:1bBR+Rra0
◆◆◆
11月9日、私たちはシュタージ本部を襲撃した。
艤装を展開したマックスを連れて、資料庫を目指す。
21:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 21:07:02.43 ID:1bBR+Rra0
この突然の襲撃事件は驚きをもって迎えられ、すぐさま警察による追跡網が形成されようとしたが、結局それはまったくうまくいかなかった。
夕方、TVで政府の広報官がこう述べたことが原因だった。
「東ドイツ国民はビザ取得のための煩雑な手続きを経ずに、西ドイツに出国できる」
33Res/19.29 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。