過去ログ - ちひろ「プロデューサーさんとの幸せな日々」
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名無しNIPPER
[saga]
2016/04/06(水) 04:34:15.50 ID:yjfF0art0
五日目
まゆ
「お、お邪魔します」
部屋の扉を開けて、まゆがどこかそわそわとした様子で入ってきた。こういう関係になってからも、まゆだけは以前とあまり変わらないというか、他と比べて『馴れ』がなかった。むしろ二人きりの時はまゆのほうが彼を意識をし過ぎて、ぎこちなくなっているほどだ。
「……やっぱり、変な感じがします」
男の隣に腰掛けて、まゆは独り言のようにつぶやく。
「Pさんとこういう関係になりましたけど、まだ実感がわかないっていうか。まるで夢みたいで……現実離れしてて、信じられなくて。だって少し前までのまゆに、いまはこうなってるんですよって言っても絶対に信じないと思いますし。これが本当のことなのか、時々わからなくなるんです……」
まゆは様子を窺うように男の横顔を見つめた。そしてそこにいる彼が幻ではないか確かめるように、恐る恐る手を伸ばした。触れたから消えてしまうのではないか。夢が終わってしまうのではないか。そんな不安に震える指先が、男の頬に触れた。自分とは違う肌の感触に、まゆはほっと息を吐いた。
「……夢じゃ、ないんですよね」
まゆは男の手をきゅっと握る。目を閉じて、寄り添うように男の肩に頭を預ける。男のぬくもりが、男の匂いが、どうしようもなく彼女を満たしていった。幸せだった。この上ない充足だった。だが満たされれば満たされるほど、不安になる。失ってしまうことが怖くなる。捨てられてしまうことが恐ろしくなった。
彼女自身、この状況の異常さは認識している。上手くいくわけがないと思っていた。プロデューサーを複数人のアイドルで共有するなど、いくらなんでも無理があると。だからこそ彼女はこの状況に加担したともいえる。失敗するとわかっていれば何も怖くなかった。これ以上、事態が悪化することはないとわかっていたから、ほとんど自暴自棄で計画に協力したのだ。
だが、いまはこうなってしまっている。事態は計画通りに推移し、驚くべきことに何の問題もなく事態は進展している。当然の障害として予想されたアイドル同士の軋轢さえなかった。むしろ同じ秘密を共有する者同士、仲が深まったほどだった。
「不思議ですよね。なにもかも順調で、怖いくらいに物事がうまく回ってて。凛ちゃんと未央ちゃんは明らかにアイドルとしてパフォーマンスが上がっていますし、美優さんは今までの儚げな雰囲気のなかに、芯が通ったというか、強さが見えるようになりましたし……留美さんはさらに自信をつけて、出来る女のオーラがビリビリ出てますし……光ちゃんはダンスのキレが全然違いますよね。弾けるような笑顔で、なんでもできるって顔をしてて……まゆも、そうなんです。
モデルのお仕事で、考えることが少なくなりました。ポーズとか、角度とか、照明とか、前はいろいろ気にしてたんですけど、今はそんなこともなくなって……思い返せば、集中出来てなかったんだと思います。自分がどう見えるのか気になって、雑念が入っちゃってたんです。だって、写真はPさんが見るじゃないですか。だからどうしたら一番かわいいまゆをPさんに見てもらえるか、そればかり考えてしまってたんです。そのせいで、何度かカメラマンさんに怒られてしまいましたけど、いまはそんなこともなくなりました」
まゆはプロデューサーの太股に手を置いた。悪戯っぽく笑みを浮かべて、指先でつつっと撫でる。
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