11: ◆m03zzdT6fs[sage saga]
2016/04/10(日) 21:11:32.51 ID:qn31rgISo
(まるで、命を燃料にして動くロボットみたいだ)
そんな風に苦笑を一つ零してコーヒーを飲み干せば、ちゃぶ台の前へと戻って。手短に着替えを済ませた。時間的には明らかに早いが、本を読みながら少し散歩をしようと思っていた。
この時間なら人通りは少ないし、歩き読みができるだろう。褒められた行為ではないが、体を動かしながら本を読めるのだし、ましてや誰かに迷惑がかかるわけでもない。
……その辺りの常識が、僕には少し欠如しているのかもしれない。
『まあ、高校にも行かず、定職にも就かず。うだつの上がらないフーテン暮らしだから当然かな』
自嘲でもなく、苦笑でもなく、客観的事実を自分で呟いて、そして再び、ファージャケットを身に纏う。これでほとんど、寒さは感じない。もともと寒さはあまり感じないから、僕が鈍感なだけなのだろうけど。
それから、リュックサックの中にノートパソコンと予備のデータを容れたUSBメモリを突っ込んで、本を手に取る。ぱらぱら、とめくっただけでも、どのような内容か、すぐに頭の中に浮かんできた。
もともと、想像力はあるほうだと思う。本を読むだけで、大体の情景が想像できた。でも、この作品はそうではなかった。想像できる範囲を超える、壮大な世界観だったのだ。
そして、この物語は決して単純ではない。単純な勧善懲悪、単純なハッピーエンドではない。”ここではないどこかで起こった歴史”だ。歴史は続いていく。
だからこそ、好きになったのだと思う。……そう思っていると、はらり、と本の隙間から何かが落ちた。
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