過去ログ - オッサン勇者と少女魔族が世界を旅する話
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31:名無しNIPPER[saga]
2016/04/25(月) 01:01:45.32 ID:OK3h9Lnco
『ならば、迷う必要はない。訊けばよいではないか』

『それは――』

側近が疑問を呈するよりも早く、魔王は玉座に腰を据えたまま、倒れ伏す勇者に向けて掌を向ける。
魔王から放たれた穏やかな魔力の波長が勇者の身体を包み込んだ。
勇者の身体はわずかに浮かび上がり、暖かな光を放つ。

『ふむ。ニンゲンの体構造はなかなかに魔族とは径庭があるな』

『私め如きが我が主に問うという愚行をお許しください。なにをなさっているのですか……?』

『我が魔力をもって、こやつの身体に宿る治癒力を最大まで引き上げておる。このまま魔力循環を促せばそのうち目を覚ますだろう』

予想外の魔王の口述に、側近は大きく狼狽する。

『僭越ながら申し上げます! 我が主の高潔な魔力をニンゲン如きに放出するなど――』

魔王は、側近の進言を遮るように言葉を重ねる。

『勘違いをするな。余はニンゲンのために魔力を放っているのではない。お前のために行っていることだ』

思わぬ自らの主の言葉に、側近は忘我の境地に至るほどの喜悦を覚えた。
顔に朱が射し、先ほどとは全く別の意味で狼狽する。
感動を口に出そうとするが、言葉にならない呻きが漏れ出るだけで要領を得ない。
恍惚の表情をそのままに、側近は魔王の行動を見守る以外できなくなってしまっていた。


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