過去ログ - オッサン勇者と少女魔族が世界を旅する話
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7:名無しNIPPER[saga]
2016/04/18(月) 01:14:14.44 ID:ZyCwTMFeo
「これだけの差を見せられてまだ戦う気力があるとはな。この差が分からぬほど弱き者でもあるまい」

「てめェを殺すことだけを目的に生きてきたからなァ……簡単にくたばるわけにはいかねェのよ」

「ほう、それが先の問いへの答えか。余を抹殺することが目的だと。して余を抹殺の後に、なにを望む。
 余が亡き後、魔族の王になるつもりか? それともニンゲンの世で名を馳せたいのか?」

「くく、ははははっ! 魔族もそんな人間らしい世俗的な考えをもてるのか! こいつは傑作だ!」

「では、重ねて問おう。余を抹殺して何を望む」

剣を握る力を強め、勇者は再び躍り掛かる。

「なァに、わかりやすい話さ! てめェを殺したあとの望みなんてねェよ! ただの復讐だ! 個人的ななァ!」

先ほどよりも疾く駆け、間合いを詰めていく。

「おぉおおぉッ!」

勇者の雄叫びに怯むことなく側近は先ほどと同じように指を二本たて、待ち構えた。
剣と指が交わったとは思えない鈍い音が、剣戟の実態とは遅れて玉座の間に響く。
上下左右、縦横無尽、あらゆる角度から仕掛けるも側近の視線を振り切ることはできない。
勇者の十重二十重に張られた陽動、牽制に目もくれず本命の斬撃だけを側近は的確に防いでくる。
不意を討っても防がれる。フェイントも意味をなさない。
それならば、受けられない攻撃を繰り出せばいい道理であると勇者は結論付けた。

(とっておきを、くれてやるッ!)

剣を諸手に構え、技を放つ。
兜割り、袈裟、逆風、逆袈裟、薙ぎ払い。あらゆる方向から時間差なく銀閃が走る。一太刀一太刀がすべて奥義の領域であり、必殺の威力を持っていた。

『疾い――』

しかしその刹那の時間にも満たない間に繰り出される一瞬二十六斬、神域まで到達した剣閃――それを側近はすべて受けきり、再び勇者の身体に掌を添え、吹飛ばした。

「っがっは!」

口から尋常でない量の血液が飛び散る。

(中身が逝きやがったか……)

激痛に襲われ、声にならない呻き声が腹の底から押し出される。
全身全霊を込めた自身の技が全く通用しない現実を目の当たりにしながらも勇者の頭は至極冷静だった。

(アレを全て見切るかよ……俺の一番の技だったんだがなァ)

回復術が追いつかない。
治癒を施しても激痛は収まらない。むしろ増していくばかりである。
虚ろな意識のまま、勇者は立ち上がる。


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