2:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:12:32.20 ID:1EMEuCfU0
あいつが、新聞を音をたてて読み始める。
ぱさぱさという音が、普段は特に何も感じないのに、今日はやけに耳についた。
「新聞の音、うるさいわよ」
3:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:13:05.47 ID:1EMEuCfU0
「別にいいじゃん」と言う。
言わなくても良いことを言ってしまったことに後悔したけれども、今更後に引くことも出来ず、泥沼にはまって行く私を、心の中のもう一人の私が「バカね」と笑っているのを感じながら、
「気に触るのよ」
4:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:14:08.24 ID:1EMEuCfU0
しかし、 あいつはそんな言葉には全くとりあうこと無く黙ったままで、しかし、ばさばさと、もっと大きな音をたてて新聞をめくっていく。
大人げないわね。
本当に、こういうところは普段と違って子供っぽい。
5:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:14:52.02 ID:1EMEuCfU0
付き合いだしてから今に至るまで、私たちは喧嘩だらけだった。 けれどもそれは長引くことは無かった。
あいつがいっつも私の言葉を大切にしてくれたから。
多分、そう。
6:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:17:26.41 ID:1EMEuCfU0
今朝かかって来た、一本の電話。
私の曲、「DIAMOND」のイントロが鳴った。
あいつの着信音だ。
7:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:18:12.64 ID:1EMEuCfU0
「鳴ってるわよ」
ソファーでゆっくりと食後のお茶を飲んでいたあいつは、まだ眠りから充分覚めきっていないような、ぼうっとした表情で私を見た。
「電話、鳴ってるわよ」
8:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:19:03.45 ID:1EMEuCfU0
「どうしたの? こんないきなり電話してきて?」
ふにゃふにゃとしまりのない顔になっていく。
そういう性格だとは知ってるけれども、あんな顔を見せられると……。
9:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:19:52.25 ID:1EMEuCfU0
ひょっとして、電話の相手が見てるあいつは私の見ているあいつとは違うのかもしれない。
そうかもしれない、そう思った。
そして寂しさが湧いて来た。
10:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:20:43.93 ID:1EMEuCfU0
これは、嫉妬なのかしらね?
この感情はこれまでにも何度か感じたことがあった。
アイドル時代なんか毎日感じてた。
11:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:21:21.39 ID:1EMEuCfU0
やがて、「うん、うん。それじゃあ」というしまりのない言葉と共はあいつは受話器を戻した。
「女の人から電話なのね」
私は、そう言った。
12:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 00:22:16.34 ID:1EMEuCfU0
慌てて、顔の前で手をふりながら、あいつはそう言った。
「本当かしらね。そのわりには随分嬉しそうに話してたけれど……」
「嬉しそうって、そりゃそうだろ。久しぶりに同級生の声を聞いてさ、嬉しくないはずないだろ」」
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