12:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:32:54.58 ID:cJnO2bq10
「また明日、迎えにくるよ」
「はい。待ってます」
13:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:34:56.45 ID:cJnO2bq10
どれくらい空を見ていたんだろう、ながれ星は私がたまたま出会ったひとつだけで、いくらじっと目を凝らしても次も見つけることはできなかった。
目の前にいる人もぽかんと口を開けたまま、宝石箱をひっくり返したみたいな夜空を眺めている。
手を伸ばしても決して届くことのない星々は孤高で、綺麗だ。
14:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:35:52.62 ID:cJnO2bq10
「少しだけ、先の約束をしようか」
いきなり、いきなりのことだ、さっきまでの軽妙な言葉はこの夜にでも吸い込まれていったみたいで、真剣なトーンが私の鼓膜を揺らし、胸の奥にある一等星がどくんと輝いた。
15:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:37:20.48 ID:cJnO2bq10
「君はきっと、あの星よりも輝けるようになる。どのくらい時間がかかるのか、それはわからないけど、必ず」
指さした先には白く輝くスピカがあって、そこからスライドさせていくと、今度はオレンジ色の恒星アークトゥルスがきらめく。
夫婦星と呼ばれる対照的なふたつと二等星のデネボラを結べば、春の大三角ができる。
16:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:38:15.66 ID:cJnO2bq10
「詳しいんだな、星に」
いつの間にか声に出していたみたいで、指摘された瞬間、顔がかあっと熱くなっていくのがわかった。
ただただ恥ずかしくて、空も、Pさんも見れなくなって、地面に目線を落とすと、ふたがされたみたいになにかしゃべることができなくなった。
17:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:39:21.79 ID:cJnO2bq10
「星に約束するよ。一番にするって」
夜だから、星は瞬く。
18:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:40:27.73 ID:cJnO2bq10
枕元に置いた携帯電話をわけもなく手にすると、数字はすっかり深夜と言われる時間を示していた。
そろそろ正しい順路で眠気がきてもいいはずなのに、どこで迷っているんだろう。
19:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:41:17.76 ID:cJnO2bq10
あぁ、星、そうだ、思い出した。
窓を開けると氷水のように冷えた空気が首元に触れて、鼻から肺の中に新しい酸素をため込む。
室内のものよりも研ぎ澄まされているみたいだけど、温度自体の差はなく感じた。
20:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:45:41.55 ID:cJnO2bq10
二回のコール音ののち、ひと呼吸置いて、「どうした」と優しい響を持った声が耳に届いた。
「お仕事中です?」
21:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:46:46.79 ID:cJnO2bq10
入寮して一週間も経っていないときのことで、ホームシックと呼ぶのが正しいのかわからないけど、今日みたいに眠れない日があって。
ほぼ一日がレッスンで、余計なことなんて考える隙間もないくらい疲れていたのに、いざベッドに寝転ぶと日中くらいに目が冴えていて、どうしようもなくさみしくなって、迷惑だとおもいつつもPさんに電話をした。
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