過去ログ - 藤原肇「ハローグッドナイト」
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21:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:46:46.79 ID:cJnO2bq10

入寮して一週間も経っていないときのことで、ホームシックと呼ぶのが正しいのかわからないけど、今日みたいに眠れない日があって。

ほぼ一日がレッスンで、余計なことなんて考える隙間もないくらい疲れていたのに、いざベッドに寝転ぶと日中くらいに目が冴えていて、どうしようもなくさみしくなって、迷惑だとおもいつつもPさんに電話をした。

以下略



22:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:48:09.85 ID:cJnO2bq10

「星、見えるか?」

「今日は絶好の星見日和ですね」

以下略



23:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:48:48.77 ID:cJnO2bq10

そうかなぁ、って、とぼける人のせいで、どんどん口が動く。

この時間が、ただただ楽しい。

以下略



24:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:50:59.74 ID:cJnO2bq10

「また行きたいな、岡山に」

「今度はPさんも一緒に。両親もおじいちゃんもきっと喜びます」

以下略



25:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:53:23.45 ID:cJnO2bq10

「なにかあれば彼を頼りなさい」

実家の工房で、こちらを振り返ることなく作業を続けながら言ったおじいちゃんの言葉は、私だけじゃなく、Pさんも認められているんだってわかってすごく嬉しかったけど、頑固が地面に根を張っているような人をどうやって説得したんだろう。

以下略



26:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:55:24.42 ID:cJnO2bq10

「ふたりでまた星を見ましょう。それから釣りもして、もちろん陶芸も」

「よくばりだな」

以下略



27:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:56:08.40 ID:cJnO2bq10

話し始めてどれくらいたったんだろう。

どこかに行っていた眠気がいつの間にかゆっくりとこっちに近づいてきて、瞼をほんの少しだけ重くする。

以下略



28:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:57:02.78 ID:cJnO2bq10

ぐだぐだと葛藤していると、光の糸が目の前をななめに走っていった。
そのあと、電話のむこうから「ながれ星だ」と聞こえてきて、違う場所にいても同じ空を見ているんだって、こんな当たり前のことを単純に嬉しいって感じる。

「また流れた」
以下略



29:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:57:50.19 ID:cJnO2bq10

「肇は星にどんなことを願ったんだ?」

「私ですか?」

以下略



30:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:58:42.13 ID:cJnO2bq10

「私は」

そう口にしたけど、次の言葉は呼吸と一緒にお腹の中に戻した。

以下略



31:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 12:59:30.05 ID:cJnO2bq10

私が祈りを捧げているのは、私が願いを込めるのは、神様でも、空にきらめく星でもなく、あなたです、なんて。

恥ずかしいからとかそういうのじゃなくて、なんとなく秘密にしておこうかな。



32:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 13:01:34.40 ID:cJnO2bq10

「そういえばさ」

「どうしました?」

以下略



33:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 13:03:14.88 ID:cJnO2bq10

「私たちが並ぶのも、遠い未来のお話でしょうか……」

私は、私はなにを言っているんだろう。

以下略



34:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 13:04:06.38 ID:cJnO2bq10

それって。

「六時間後、は難しいにしても、また明日会える」

以下略



35:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 13:04:53.80 ID:cJnO2bq10

「そろそろ眠くなってくるころか」

楽しいひとときはあっという間に過ぎて、突然時間を知らせる鐘が鳴る。
ふと時計を見ると、いつの間にか日が変わっていた。
以下略



36:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 13:05:43.17 ID:cJnO2bq10

窓から見える景色は眠らない街で、私もその片隅にいて、Pさんも同じだ。
同じ時を過ごしていて、同じ空を見ている。
時間が止まればいいのにっておもっても、いつか夜は明けるし、朝は必ず訪れる。

以下略



37:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 13:07:28.60 ID:cJnO2bq10

私のせいでこんな時間まで。

きっとあなたは、気にするな、って言葉と一緒に笑うんでしょう。

以下略



38:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 13:08:09.53 ID:cJnO2bq10

「それじゃあ、おやすみなさい」

「あぁ、おやすみ」

以下略



39:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 13:09:07.70 ID:cJnO2bq10

終わりはいつだってあっさりしたもので、その方がいい。

通話を切って、私は瞼を閉じて夜に帰っていく。

以下略



40:名無しNIPPER[saga]
2016/05/22(日) 13:10:36.36 ID:cJnO2bq10

おわり


ここまで読んでいただいてありがとうございました。
以下略



41:名無しNIPPER[sage]
2016/05/22(日) 13:12:34.28 ID:32OvNSMFo
乙です。
ありがとうございました。


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