148:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 11:41:50.15 ID:49W9hqJ1o
◇ ◇ ◇
楓は窓辺に寄りかかって夜を見上げていた。
眩しいくらいな月明かりの下、遠くに漣のような街のざわめきを感じながら、夢と区別がつかないほどの曖昧な風景を考える事もなく考えていた。
149:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 11:42:20.08 ID:49W9hqJ1o
楓「……蘭子」
蘭子「なぁに?」
楓「最近、お友達と仲良くやってる?」
150:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 11:42:46.60 ID:49W9hqJ1o
楓「絵も、とても上手になりましたね」
蘭子「えへへ……頑張ったもん」
楓「お友達もたくさん増えたし、学校ではとっても真面目だって聞きましたよ」
151:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 11:43:13.18 ID:49W9hqJ1o
楓「蘭子に素敵な友達ができて、私たちも嬉しかった。ありすちゃんや小梅ちゃん、由愛ちゃんたちはもうすっかり大人になってしまったけれど、それでも蘭子を一人の友人として大切に思ってくれています。卯月ちゃんと凛ちゃんも、あなたに色々な事を教えてくれましたね。ドールのための学校ができて、そこに通うことになった時、みんなが祝福してくれました」
楓は、静かに、ゆっくりと、星空に語りかけるようにしゃべった。
蘭子はキョトンとしながらそれを聞いていた。
152:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 11:43:46.98 ID:49W9hqJ1o
蘭子「旅行に行くの?」
楓「旅行ではありません。もっと遠い、どこかへ行くんです」
蘭子「いつ行くの? どれくらいかかるの?」
153:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 11:44:34.06 ID:49W9hqJ1o
楓「……蘭子、あなたはとても良い子です。だから、嫌だなんて言わないで……ね?」
蘭子「…………」
蘭子は首を横に振って抵抗した。
154:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 11:46:13.83 ID:49W9hqJ1o
楓はこれまでに十分すぎるほど一人の女性を愛し、一人の人形を愛してきた。
そして、それが10年という時の実を結び、役割を終えたことを悟ったのである。
楓は、血の繋がりのない3人の間に、人間とドールの新しい家族の形を、これから世界に広がっていく新しい人類と人形の社会の姿を、遺伝子として残した。
飛鳥が自分の悲しみと孤独の、死の記憶を世界に残そうとしたように。
155:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 11:46:41.10 ID:49W9hqJ1o
【――epilogue】
156:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 11:47:08.18 ID:49W9hqJ1o
――そして、月日は流れました。
157:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 11:47:53.03 ID:49W9hqJ1o
……あなたが居なくなってしばらく、私の心にあったのは、からっぽの空洞だけでした。
いっぱい泣きました。
あなたが居ない寂しさに耐えられないと思った事もありました。
それでも、私が挫けずに生きてこられたのは、あなたがたくさん愛してくれたこの子が、今日まで私の傍にいてくれたからです。
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