78:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:30:57.22 ID:49W9hqJ1o
蘭子「みゆさん、これ……」
美優の袖を引っ張って蘭子が見せたのは、黒い羽ペンだった。
美優「欲しいの?」
値段を見るとびっくりするほど高かった。
美優が首を振ると、蘭子はすぐにそれを察した。そしてひどく残念そうな顔をして諦めるのだった。
そんな聞き分けの良い蘭子の、子供らしくない姿を見ると、美優は無性に切なくなった。
もっとわがままを言って欲しいとすら思った。
小梅「そ……それ……かっこいいよね……」
いつの間にか背後にいた小梅が蘭子に声をかけた。
蘭子はぎょっとして一瞬身を引いたが、不思議なことに、先ほどの怖いと思う気持ちはもう無かった。
小梅のさりげない優しい微笑に奇妙な親しみを感じ、そこでようやく、蘭子の不器用な心に勇気が生まれたのである。
蘭子「……わ、我と同じ瞳の持ち主とは……フフフ、下界もまだまだ捨てたものではないということか……」
小梅「……?」
貴音「随分と面妖な言葉遣いをなさるのですね」
美優「ああ、えーっと、これはですね……たぶん『来て良かった』って言ってるんだと思います」
まさかこんな所で蘭子の"オペレーション・コードR"が発動するとは思わず、美優は拙い翻訳でその場をごまかした。
このオペレーションなんちゃらとは、いわゆる蘭子独自の世界観に基づいたオリジナル言語のことで、蘭子自身が名づけたものである。
本来、こうした翻訳は楓の役割なのだが、この時楓は店の隅で興味深げに商品を物色している最中だった。
完全に自分だけで楽しんでいる。
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