過去ログ - 楓「命短しススメよ乙女」
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79:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:31:43.17 ID:49W9hqJ1o
それから蘭子は小梅が案内するままに一緒に店のものを見て回った。
蘭子は相変わらず難解な言葉のまま会話していたが、小梅はさほど気にしていない様子だった。
というよりも、すっかり仲良くなってしまったようだった。
何か通じ合うものをお互いに感じ取ったのかもしれない。
美優はようやく安心できた。
以下略



80:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:32:31.48 ID:49W9hqJ1o
美優は、蘭子が欲しがっていた物のうち(と言ってもほとんどの商品に興味を示していたが)、荘厳な装飾が施されたブックカバーを買ってあげた。
蘭子は大いに喜んで「慈悲深き聖母よ!」とはしゃいだ。
ちなみに慈悲深き聖母とは蘭子が名づけた美優のソウルネームである。

貴音「またのお越しをお待ちしております」
以下略



81:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:33:04.36 ID:49W9hqJ1o
美優「蘭子ちゃん! 蘭子ちゃん!」

美優がまるで死んだ人の名前を呼ぶように叫ぶので、通行人が何人か声をかけるほどだった。
「大丈夫ですか?」「何かあったんですか?」「救急車呼びましょうか?」
そのたびに楓は「すみません、なんでもないんです」と言って遠慮した。
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82:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:33:49.02 ID:49W9hqJ1o
商店街の中央に広いフードコートがあるのを見つけたので、楓と美優は空いた席に蘭子を座らせて様子を見た。
しばらくして蘭子がふっと目を開いて起き上がった。

蘭子「あれ?」

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83:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:35:11.63 ID:49W9hqJ1o
お昼が近づき、辺りが混雑してきたので、3人は手早くランチを済ませ移動することにした。
蘭子も含めて相談した結果、寄り道せず先に目的地へ向かってしまおうという事になった。
蘭子は特にそれを残念がったりしなかった。
というのも、サイン会が行われるのはこの商店街で一番大きい書店だったので、本好きの蘭子にとっては夢にまで見た場所なのだ。

以下略



84:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:35:57.99 ID:49W9hqJ1o
楓「いえ、特に本を探しに来たわけではないんですが……」

「ああ、二宮飛鳥先生のイベント参加者ですか」

蘭子「は、はい!」
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85:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:36:40.16 ID:49W9hqJ1o
「困りましたね。今ここに迷い込まれるとかなり面倒なんですが……」

美優は少女の言っている意味が分からず、再び蘭子を探しに行こうとしたが、またしても少女が阻もうとしたので、

美優「もう、どういうことですか? なんで中に入っちゃいけないんですか? そもそもあなた、誰なんですか?」
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86:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:37:25.66 ID:49W9hqJ1o
少女に従って中に踏み入ると、2人は狐につままれたような気持ちになった。
確かに迷宮なのである。
通路の突き当たりを曲って歩くとまた別の通路に突き当たり、自分たちが今この建物のどこに居るかも分からない。

橘「お客様はどちらもご来店は初めてですか?」
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87:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:38:23.66 ID:49W9hqJ1o
……しばらく歩いて、階段を上り、また歩いて階段を上り、本当にこのまま蘭子を見つけられるのか心配になった頃、

橘「つきました。たぶんここに居ると思います。たぶん」

そう言って指差した先は、ひっそりと壁に張り付いているような扉だった。
以下略



88:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:39:46.66 ID:49W9hqJ1o
文香「ありすちゃんも、ありがとう」

橘「私にかかれば、これくらいどうってことありません」

フフンと鼻を鳴らして得意気である。
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89:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 00:41:12.63 ID:49W9hqJ1o
文香「元々、ここは図書館でした。遥か昔、全国的な図書館民営化の流れで、いくつもの価値ある図書が利益至上主義のもとに淘汰され、それを見かねた私の祖父がこの街の図書館を買い、こうして人類の共有財産である知的文化の保存を目的とした書店が作られました。それ以来、鷺沢の者が代々ここの経営者を務めています。

文香「しかし父の代で、この書店に異変が起こりました。どんなに本を並び替えても、次の日には別の場所に本が移動しているという現象が頻繁に起きるようになったのです。次第にそれは日毎ではなく時間毎、分毎に変わり、さらには本棚や店の構造まで変化してゆき、いつしかこの店は誰にもその全容が分からない迷宮と化してしまいました。

文香「さらに、いつの間にか注文した覚えのない本が並んでいたり、明らかに建物のスペースに収まりきらない長い通路が出来ていたり……建物の枠を超えて、本と空間が無限に増え続けていったのです。そんな奇怪としか言いようのない事態が次々に起こるので、とうとうある日、内部の本格的な調査が行われる事になりました。
以下略



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