15:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:53:20.86 ID:sf9XWsg90
 「そういえばPさん」 
  
 「なんですか?」 
  
 「今思い出したんですけど、私たちって喧嘩らしい喧嘩ってあんまりなかったですね」 
16:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:54:05.04 ID:sf9XWsg90
 出かける準備が整い、突然のことに少しついていけない彼をしり目に、勝手に話を進める。 
  
 でもいいんだ、今日は彼をいじめてもいい日。 
  
 ありったけの怒りと恨みをこめて、彼に文句を。 
17:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:54:51.70 ID:sf9XWsg90
 「あなたのこと、8年間ずっと嫌いでした」 
 −−あなたのことが、8年間ずっと好きでした。 
  
 「仕事うまくいかない私を誑かし、プロデュースされてとっても退屈でした」 
 −−仕事がうまくいかない私を誘い、プロデュースしてくれてとても楽しかったです。 
18:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:55:34.65 ID:sf9XWsg90
 途中から震えていた私の言葉を、彼は眼を閉じて最後まで受け止める。 
  
 私が何も言わなくなったことに気付いて、ゆっくり目を開く。 
  
 吸い込まれそうな、穏やかな彼の瞳が私の視線と交わり、見つめあう。 
19:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:56:08.16 ID:sf9XWsg90
 「……うそつき」 
  
 「うん」 
  
 「言い返さないんですね。約束守ったって自分から言うくせに」 
20:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:56:47.79 ID:sf9XWsg90
 「ホント、どうしようもない人ですね……しょうがないので、最後におまじないです」 
  
 「えっ……んっ」 
  
 驚く彼の顔に、震える唇で無理やりキスをする。 
21:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:57:21.38 ID:sf9XWsg90
 「さ、そろそろ時間ですよ。もう出なきゃ飛行機、間に合わなくなります」 
  
 「おっと、本当だ。じゃあ、もう行くな」 
  
 「はい。あ、外まで見送りとかはしないので、ここで」 
22:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:57:53.54 ID:sf9XWsg90
 追い出すように、平気な顔をして手を振って見送る。 
  
 玄関ドアが少しずつ閉まる。ゆっくり彼の姿が小さくなり、やがて完全に見えなくなる。 
  
 一瞬だけボーっとしてしまう。頭を振って無理やり意識を取り戻して、部屋に戻った。 
23:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:58:38.31 ID:sf9XWsg90
 「もしもし、楓さんですか? 今お電話大丈夫でしょうか?」 
  
 「私ですか? ええ、何もありませんし、大丈夫ですよ」 
  
 「ふふ、変な楓さんですね」 
24:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:59:11.21 ID:sf9XWsg90
 「……」 
  
 「お待たせしました。やっぱり5箱なんてあっという間ですね」 
  
 「はい。おかげさまで、だいぶ部屋がすっきりしました。余計なものがなくなったので、とってもいい気持ちです」 
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