1: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:07:22.59 ID:PfRiXHRX0
・モバマスのSS 
  
 ・書き溜めありなのでさくっと終わる予定  
  
 ・地の文あり&掌編 
  
 ・大人になった奏のお話 
  
 それでは始めて行きます。
SSWiki : ss.vip2ch.com
2: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:08:01.86 ID:PfRiXHRX0
 私は一人、夜の道を急いでいた。 
 特別遅い時間というわけでも、人気のない夜道というわけでもない。寧ろ、所謂繁華街と言われる場所だから、人通りは多い。 
 アイドルの私がこんな所にいるのも、問題と言えば問題かもしれないけれど……もう二十歳は超えたわけだし、いいってことで。 
  
 「……っと。確かここよね」 
3: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:08:42.69 ID:PfRiXHRX0
 そんな事を考えながら急ぐこと数分、私は目的の場所へとついていた。 
 シックな木目調の扉、提げられたプレートには小洒落た『Bar』の文字。 
  
 「ここに来るのも、大分久しぶりかしら」 
  
4: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:09:33.15 ID:PfRiXHRX0
 「これはまた、お久しぶりですね」 
  
 「ふふ、ご無沙汰しちゃったわね」 
  
 「来て頂けてうれしいですよ。とはいえ、活躍は日々拝見させてもらっていますが」 
5: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:10:12.86 ID:PfRiXHRX0
 「ごめんなさい、待たせたかしら?」 
  
 「いや、そんなには。一杯、先に頂いちゃったけどね」 
  
 そういって、彼はグラスを振る。もう、グラスは空になっている。 
6:名無しNIPPER[sage]
2016/07/01(金) 00:11:18.00 ID:KCPYnZano
 おっしゃ百合SSだああああああ 
 期待ゥー! 
7: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:11:31.35 ID:PfRiXHRX0
  
 「俺はもう一杯、これを貰うけど。そっちはどうする?」 
  
 「そうね……マスター、ブラッディ・マリーを」 
  
8:名無しNIPPER[sage]
2016/07/01(金) 00:12:10.75 ID:KCPYnZano
 はぁ? 
 幻滅しました 
9: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:12:19.94 ID:PfRiXHRX0
 「じゃあなんで?」 
  
 「共演者とちょっと……ね」 
  
 「……ああ。あの俳優かぁ」 
10:名無しNIPPER[sage]
2016/07/01(金) 00:12:40.55 ID:KCPYnZano
 こんな糞スレ二度とたてんなボケが 
11: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:13:43.91 ID:PfRiXHRX0
 「お待たせしました」 
  
 少しの後、マスターが注文したカクテルを持ってくる。 
 私には、トマトジュースの色が鮮やかなブラッディ・マリー、そして彼には、黄金色が美しいシャンディガフ。 
 そして、おつまみ用にオニオンリング。 
12: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:16:02.50 ID:PfRiXHRX0
 グラスが、涼やかな音を立て鳴らし、私は静かにグラスに口をつける。 
 久しぶりに飲むお酒。トマトジュースとウォッカが、胡椒やタバスコで引き締められていて、とても美味しい。 
 彼に――プロデューサーに連れられて来て以来、色々なカクテルを知ったけれど、その中でもこれはとても好きなお酒だった。 
 そして、そのプロデューサーはと言えば。 
  
13: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:16:35.76 ID:PfRiXHRX0
 「いや何、奏がブラッディ・マリーを飲んでると、なんか血を飲んでるみたいだって、そんな事を思ってさ」 
  
 「なぁに、どうしたの急に」 
  
 「いや、ふとな。なんか奏って、ヴァンパイアっぽいというか……そういう雰囲気が似合うし。退廃的っていうか」 
14: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:17:20.38 ID:PfRiXHRX0
 「ふふ、ありがと」 
  
 「お礼を言われることでもない気がするけど」 
  
 「それでも、よ」 
15: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:17:50.02 ID:PfRiXHRX0
 けれど、私は。 
  
 「いいえ、大丈夫」 
  
 そう言って垂れたところを軽く指先で拭うと、指を嘗める。 
16: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:19:15.90 ID:PfRiXHRX0
 「マスター、シンデレラ1つ」 
  
 「私はギムレットで」 
  
 「畏まりました」 
17: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:19:59.84 ID:PfRiXHRX0
 「プロデューサーはもうノンアルコール?」 
  
 「明日も仕事あるんでな、勘弁してくれ。しかしまた奏は、強めのをぐいぐいいくなぁ」 
  
 「あら、そうかしら?」 
18: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:20:37.31 ID:PfRiXHRX0
 大人になって、大人組――今では自分がだけれど――に色々とお店を連れ回されて、大分お酒に強くなった 
 けれど、それでも、20歳になったその日の事……プロデューサーに、ここへと初めて連れてきて貰った時のことは、よく覚えてる。 
 あの時は、お酒を飲む事も初めてで、カクテル一杯で立てなくなってしまったのよね。そしてその後も、色々あって。 
 ふと横を見てみれば、どうやらプロデューサーも私を連れてきた時の事を思い出していたらしい。 
  
19: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:22:04.75 ID:PfRiXHRX0
 「ふぅん。そう言う事言うのね、プロデューサー。その後、『一杯で沈んだ』私の事を……」 
  
 「いやあれは――うん、いや、あれだ。この話はやめておくか」 
  
 「ふふ、それが賢明ね」 
20: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:23:36.82 ID:PfRiXHRX0
  
 なんて、私をよそにそんな会話をしているマスターとプロデューサー。 
 女性として扱ってくれるのは嬉しいけれど……もう、失礼しちゃうわね。 
 それにしても……。 
  
21: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:24:26.67 ID:PfRiXHRX0
 「……あの時は、ギムレットには早すぎたのかしら、なんてね」 
  
 プロデューサーが談笑している横で、そう独りごちて笑って。 
 私は、ギムレットを口した。 
 ギムレットの味は、あの時と同じままで何一つ変わっていない。それなのに、私はあれから随分と変わってしまった気がする。 
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