19: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:22:04.75 ID:PfRiXHRX0
「ふぅん。そう言う事言うのね、プロデューサー。その後、『一杯で沈んだ』私の事を……」
「いやあれは――うん、いや、あれだ。この話はやめておくか」
「ふふ、それが賢明ね」
20: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:23:36.82 ID:PfRiXHRX0
なんて、私をよそにそんな会話をしているマスターとプロデューサー。
女性として扱ってくれるのは嬉しいけれど……もう、失礼しちゃうわね。
それにしても……。
21: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:24:26.67 ID:PfRiXHRX0
「……あの時は、ギムレットには早すぎたのかしら、なんてね」
プロデューサーが談笑している横で、そう独りごちて笑って。
私は、ギムレットを口した。
ギムレットの味は、あの時と同じままで何一つ変わっていない。それなのに、私はあれから随分と変わってしまった気がする。
22: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:26:03.05 ID:PfRiXHRX0
私のギムレットも、彼のシンデレラも飲み終わって、何となくの無言が続く。
それは決して、気まずい沈黙ではなくて、気安い関係特有の、気持ちい沈黙だったのだけれど。
「なぁ、奏」
23: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:27:27.83 ID:PfRiXHRX0
けれど、それを認めてしまうのは、なんだか悔しくて。無駄だとはわかっていても、誤魔化してみる。
「なんだか貴方と呑みたかったから、じゃダメかしら」
「まぁ、それでも嬉しいけど。そうじゃないだろ?」
24: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:28:22.79 ID:PfRiXHRX0
泣きたいくらい嬉しくて、けれどなんだか、悔しくて。
だから。だから、私は――……。
「……私ね、少しだけ嘘をついたわ」
25: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:29:07.47 ID:PfRiXHRX0
本当は、こんな弱音を吐くつもりはなかった。
久しぶりにプロデューサーとお酒を飲んで、思い出話に花を咲かせて。
それでおしまい。明日からまた頑張りましょう。そう言って、終わりにするはずだったのに。
「貴方にスカウトされて、高校生の時にアイドルとデビューして、とっても素敵な経験ができたわ」
26: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:29:34.91 ID:PfRiXHRX0
私自身、アイドルとして活動する事が楽しかった。仲間とライブをするのが楽しかった。彼と一緒に歩んでいくのが楽しかった。
それは偽りのない本当の気持ちだけれど、それはいつも、私の為ではなくて、ファンという他の『誰か』の為だったこともまた事実で。
「それは……アイドルだから」
27: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:31:19.50 ID:PfRiXHRX0
「奏は、奏だよ。誰が何と言おうと……昔からずっと俺のパートナーの、速水奏だ」
彼はこうやって、こういう時に欲しい言葉をくれる人だから。
それに甘えてはいけないって、頭ではわかってる。
彼とは背中を預け合う関係で、寄りかかっちゃいけない関係なのだから。
28: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:32:08.80 ID:PfRiXHRX0
「ねぇ、プロデューサー。私はね、貴方の事が好きよ。ずっと私を支えて、共に歩んでくれた貴方の事が」
「……」
「けど、これは表に出しちゃいけない感情だってわかってる。私はアイドルだから」
29: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:33:35.45 ID:PfRiXHRX0
そう言った時、私の目の前に一つのカクテルが運ばれてくる。
オレンジ色をした、綺麗なカクテル。一見すれば、オレンジジュースにも見えてしまう。けれど確かに、お酒の香りがする。
プロデューサーはどうやらそのカクテルの名前が分かったようで、少しだけ驚いているようだった。
「だから、ねぇ。今だけでもいいの。私の事を、一人の女性として大切に思ってくれるのなら……」
30: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:34:17.55 ID:PfRiXHRX0
「ねぇ、早くキスして?」
31: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:36:32.40 ID:PfRiXHRX0
おわり。
この先、何があったかは……各自のご想像にお任せします、という事で。
奏、Bar、そしてスレ名の時点で何やりたいかわかった方もいたかもしれませんね。
奏にはBarとカクテルは似合う、というところから始まったSSですが、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
32:名無しNIPPER[sage]
2016/07/01(金) 00:46:33.99 ID:pP9oy8b3o
大人になった奏ってどうなんだろうか
大人っぽい高校生と言うのが彼女のアイデンティティなのではないのだろうか
よくわからない
33:名無しNIPPER[sage]
2016/07/01(金) 01:10:13.02 ID:KCPYnZano
つまんねーの
34:名無しNIPPER[sage]
2016/07/01(金) 01:35:23.44 ID:pV+7Vb3k0
おつおつ
35:名無しNIPPER[sage]
2016/07/01(金) 01:44:16.18 ID:2ispt9bJO
奏とお酒口移ししたい
36:名無しNIPPER[sage]
2016/07/01(金) 02:30:39.63 ID:XBsbcOswO
乙
オサレなふいんきだわ
37:名無しNIPPER[sage]
2016/07/01(金) 08:19:54.90 ID:pDMe+2osO
乙
よかった
38:名無しNIPPER[sage]
2016/07/01(金) 20:53:59.20 ID:RKBDdQqHo
乙乙
誘い受けですねぇ
大人奏は歳が色気に追いつきつつふと見せる少女らしさがポイントなんじゃないかな
39:名無しNIPPER[sage]
2016/07/01(金) 23:15:51.31 ID:ov7gKr0AO
乙 素晴らしい
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