過去ログ - 速水奏「早くキスして」
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12: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:16:02.50 ID:PfRiXHRX0
グラスが、涼やかな音を立て鳴らし、私は静かにグラスに口をつける。
久しぶりに飲むお酒。トマトジュースとウォッカが、胡椒やタバスコで引き締められていて、とても美味しい。
彼に――プロデューサーに連れられて来て以来、色々なカクテルを知ったけれど、その中でもこれはとても好きなお酒だった。
そして、そのプロデューサーはと言えば。

以下略



13: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:16:35.76 ID:PfRiXHRX0
「いや何、奏がブラッディ・マリーを飲んでると、なんか血を飲んでるみたいだって、そんな事を思ってさ」

「なぁに、どうしたの急に」

「いや、ふとな。なんか奏って、ヴァンパイアっぽいというか……そういう雰囲気が似合うし。退廃的っていうか」
以下略



14: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:17:20.38 ID:PfRiXHRX0
「ふふ、ありがと」

「お礼を言われることでもない気がするけど」

「それでも、よ」
以下略



15: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:17:50.02 ID:PfRiXHRX0
けれど、私は。

「いいえ、大丈夫」

そう言って垂れたところを軽く指先で拭うと、指を嘗める。
以下略



16: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:19:15.90 ID:PfRiXHRX0
「マスター、シンデレラ1つ」

「私はギムレットで」

「畏まりました」
以下略



17: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:19:59.84 ID:PfRiXHRX0
「プロデューサーはもうノンアルコール?」

「明日も仕事あるんでな、勘弁してくれ。しかしまた奏は、強めのをぐいぐいいくなぁ」

「あら、そうかしら?」
以下略



18: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:20:37.31 ID:PfRiXHRX0
大人になって、大人組――今では自分がだけれど――に色々とお店を連れ回されて、大分お酒に強くなった
けれど、それでも、20歳になったその日の事……プロデューサーに、ここへと初めて連れてきて貰った時のことは、よく覚えてる。
あの時は、お酒を飲む事も初めてで、カクテル一杯で立てなくなってしまったのよね。そしてその後も、色々あって。
ふと横を見てみれば、どうやらプロデューサーも私を連れてきた時の事を思い出していたらしい。

以下略



19: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:22:04.75 ID:PfRiXHRX0
「ふぅん。そう言う事言うのね、プロデューサー。その後、『一杯で沈んだ』私の事を……」

「いやあれは――うん、いや、あれだ。この話はやめておくか」

「ふふ、それが賢明ね」
以下略



20: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:23:36.82 ID:PfRiXHRX0

なんて、私をよそにそんな会話をしているマスターとプロデューサー。
女性として扱ってくれるのは嬉しいけれど……もう、失礼しちゃうわね。
それにしても……。

以下略



21: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:24:26.67 ID:PfRiXHRX0
「……あの時は、ギムレットには早すぎたのかしら、なんてね」

プロデューサーが談笑している横で、そう独りごちて笑って。
私は、ギムレットを口した。
ギムレットの味は、あの時と同じままで何一つ変わっていない。それなのに、私はあれから随分と変わってしまった気がする。
以下略



22: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2016/07/01(金) 00:26:03.05 ID:PfRiXHRX0
私のギムレットも、彼のシンデレラも飲み終わって、何となくの無言が続く。
それは決して、気まずい沈黙ではなくて、気安い関係特有の、気持ちい沈黙だったのだけれど。

「なぁ、奏」

以下略



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