過去ログ - 吹雪「はやく辞めてくださいよ司令官」 提督「吹雪さんこそ」
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139: ◆36ujqGfUl2[saga]
2016/10/12(水) 00:25:07.10 ID:WjS2YlCB0
 話をしながら歩いていると、廊下が装甲化された地区にさしかかる。いざという時は全てのシャッターを下ろし、艤装を守る要塞ともなると聞いている。
 艦娘という人型の生き物と、その装備である艤装は不可分と言ってもいい関係にあり、その両方が高い機密によって守られているのだ。
 親潮と初月は、物々しい雰囲気に緊張を高めた。自分達は反逆スレスレの目的で艤装を身につけ、武装をしようとしているのだ、という事実の重さを感じる。

(大丈夫だ、この書類があれば……)

 自分の手の中にある書類を見て、ふと、初月は疑問を感じる。

「そういえば……この書類は誰に渡せばいいんだろう」
「……言われて見ればそうですね」

 親潮も不思議そうな顔をした。
 この鎮守府に現在配属されている人間は提督だけだ。運営の業務は全て残った艦娘と、そのサポートをする存在たちが行っている。
 運営といっても、ほんのわずかな人々(艦娘含む)がごく普通に生活する程度の仕事だ。訓練等も自主的に行うものとされている上で、大して積極的に行っている者もいない。
 有体に言って、みんな暇をもてあまして好き勝手に過ごしていた。
 そんな緩んだ雰囲気に不満を募らせたのがこの二人だったが、緩みきっていると思われた吹雪が全く緩んでいなかったので、この鎮守府に対する印象がよくわからなくなっていた。

「まだ自分達が会ったことがない、誰かがいるということでしょうか」
「そうなるのか……?」

 しかし、着任時に不在だった艦娘へも、鎮守府を歩いて挨拶回りをした。その時も、その後の会話にも他に誰かがいるという話は出てこなかったと思う。

「……確かに格納庫には挨拶に行かなかったけどさ」
「……中に住んでる人がいるのかも」

 そんな冗談を言って、少し親潮は笑った。
 初月も、つられるように微笑んだ。冗談そのものより、ずっと塞いでいた親潮が笑ってくれたことが嬉しかった。
 艤装の許可をもらえたこと、そして提督が味方であるとわかったことが良かったのかもしれない。少なくとも自分達はこの鎮守府で、孤立したわけではなかった。
 そう意識すると、自分の足取りも少し軽くなった気がした。


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