過去ログ - 吹雪「はやく辞めてくださいよ司令官」 提督「吹雪さんこそ」
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30: ◆36ujqGfUl2[saga]
2016/07/05(火) 14:30:13.22 ID:WUg/S8Lr0
 くわえていたタバコを足元に落とし、見せ付けるように踏みつける。
 その間も吹雪の表情はにこやかで、口調もまた変わらず穏やかだったが、親潮はその裏に心臓が潰れそうな圧力を感じていた。
 吹雪の中に存在していたそれを、ずっと感じてはいたのだ。わかっていたから、今まで何も言えなかった。
 内在していたものを表に出した吹雪の迫力に、逃げ出したくなる。それでも親潮は、吹雪をにらみかえしてみせた。

「脅すつもりですか……」
「怖がらせてしまいましたか。ごめんなさい」

 その声は優しかった。幼児をあやすような、ペットにした小動物にかけるような、優しさ。
 親潮は必死で敵意を燃やす。

「……そんなことは、ありません」

 自分の声が震えていたことに、思わず涙が流れそうになる。
 吹雪が一歩を踏み出す。
 思わず後ずさりをしてしまい、そんな臆病な自分を呪う。それでも怖かった。
 後ろにいるはずの初月は動かない。動けないのか。
 目の前で、ただ笑顔で歩いているだけの吹雪に二人は制圧されていた。
 吹雪はゆっくりと親潮に近づいてくる。怖い。何の気負いもない、その笑顔が恐ろしい。

「うう……」
「どうしたんですか。前線ではそんな態度じゃあ、目にあまる、では済まない」

 吹雪は7年以上前、開戦以前に最初に建造された艦娘の一人だ。それはつまり、死の世界で生きてきた艦娘ということだ。数え切れない戦いをくぐりぬけている。彼女にとっては、生きていること自体が戦いだったはずだ。
 それは、一日分の生を、十の深海棲艦の死で贖うということだ。


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