17:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:31:33.72 ID:BFmKl9Djo
「……どうしてなんだろう?」
思わず、そう声をあげたとき、ケイくんが不可解そうにこちらを見た気がした。
わたしは彼の方を見ていなかったから、彼の視線がどこに向かっていたかは、本当のところ分からなかったけど。
「なにが?」
少ししてから、ケイくんはそう訊ねてきた。
なにが? なにがだろう。なにが、"どうして"なんだろう。
自分でも、やっぱりよく分からない。
だから、言葉にできる部分だけを、問いにして答えてみた。
「どうしてお兄ちゃんは、わたしにお金を遺したりしたんだろう?」
彼はまだ二十代で、やろうとしていたことも、行きたい場所も、きっとあったはずなのだ。
わたしに遺しただけのお金があれば、きっと、いろいろなことができたはずなのだ。
それなのにどうして彼は、わたしにそれを渡してしまったんだろう。
どうして自分のために、そのお金を使わなかったんだろう。
それがひどく、申し訳ないことに思える。
「俺が知るわけない」とケイくんは言ったけど、もちろんわたしだって答えを期待していたわけじゃなかった。
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