826:名無しNIPPER[saga]
2017/10/30(月) 00:37:25.92 ID:J5LgB8ivo
一歩踏み出すと、冷たい風がわたしの首筋をするりと撫ぜる。
身をすくませるような怖気。
この先へ降りていくことは、間違っているのかもしれない。
本当は正しいべつの扉があって、今からでも、探せばそこにたどり着けるのかもしれない。
でも、でも……そんなことを言っていたら、いつまで経ってもひとつの扉なんて選べない。
べつの扉の先に向かったところで、やっぱりここも間違いなのかもしれないと足踏みするだけだ。
そう分かっていても、踏み出すことがおそろしいと、そう思ってしまうのは、やっぱり間違っているんだろうか。
この扉はなにかもが間違いで、わたしの選択はなにもかもが間違いで、この先にはなにひとつ残っていないかもしれないと、
それをたしかめるのがおそろしいと思うのは……。
だからわたしは二歩目を踏み出せずに、ただ吹き付けるような冷気を浴びながら、どうしようもなく立ちすくんでしまう。
答えを見るのはいつだっておそろしい。
踏み出すことはいつも。
だから、
「――」
肩を掴まれて、おどろいて、怯える余裕もなくて、
そうして次の瞬間には、安心していた。
ケイくんが、そこにいた。
992Res/853.12 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。