86:名無しNIPPER[saga]
2016/07/12(火) 00:23:12.86 ID:r7ZkODrmo
近付いて分かったのは、その壁に扉があること。
その扉が、木の枝に覆われていること。
その木の枝に隠されるように、ひとりの女の子が磔にでもされたみたいに吊るしあげられていたこと。
もはや、驚くことさえできなかった。
その子が誰だとか、ここがどこだとか、今がいつだとか、そんなことはもう、頭から抜け落ちてしまった。
からたちの木、その突き刺さりそうな枝、壁をうめつくさんばかりに伸ばされたその棘が、ひとりの少女をとらえている。
この景色がいったい何を意味しているのか、わたしにはまったく分からない。
にもかかわらず、景色は勝手に動く。
現実感なんて、もはやない。
驚きも恐怖も、既に感じない。
からたちに捕まった少女が、瞼を静かに開いた。
(彼女の細く頼りない腕を、からたちの棘が突き刺している――)
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