過去ログ - 開かない扉の前で
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87:名無しNIPPER[saga]
2016/07/12(火) 00:23:44.06 ID:r7ZkODrmo

「――ああ、来てくれたの」

 と、少女は笑う。

 わたしたちは、その光景に呑まれる。

「でも、残念。やっぱり、間に合わなかった」

 吊るしあげられたまま、少女は微笑みを保ち、どこも見ていないような目で、わたしたちの方を見ている。

「……だって、一度、逃げ出したものね」

 彼女はわたしのことを知っているみたいな口振りで、
 でもわたしは、彼女のことなんて知らない。

「ねえ、どうしてわたしを置いていったの? どうしていまさらここに来たの?」

 抑揚のない声で、少女は続ける。

「あなたのせいで――わたし、死んじゃった」

 彼女は最後にそう言うと、愉しそうに笑いはじめる。
 声は徐々に膨らんでいく。
 それと同時に、彼女の体が砂のように崩れはじめたかと思うと、夜風に舞って遠くへと流されていく。

 不意に、からたちの枝が、意思を持っているかのように左右に開けた。




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