10: ◆FlW2v5zETA[saga]
2016/07/04(月) 07:21:18.50 ID:QBwtVvxaO
「まぁ、でも気にしないでくださいね。ガンガンぶっ放してナンボですから。」
「ん。ありがと。」
背中越しに聞こえたのは、いつものトーンに戻った声だった。
でも無理をさせてるような気がして、ふと振り返ろうとした。その時の事。
「ねぇ…ふたりの時は、“ユウ”って呼んでよ。」
肩にしなだれ掛かる腕の重みと、甘い匂い。
耳許で囁かれたそれは。成人祝いに提督に飲まさせられた、高いウィスキーの様な。
クラクラと回る、甘さと危うさを孕んだ声だった。
「北上さん、それは…?」
「アタシの本名。アタシも整備くんの事、ケイちゃんって呼ぶからさ。お願い。」
「は、はい…。」
一瞬、陸奥さんにでも抱き付かれたのかと思った。
でもそれぐらいその時の彼女は、余りにいつもと違っていて、艶かしく見えて。
俺はその豹変ぶりに、興奮よりも、少しの恐怖感を覚えていた。
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