過去ログ - 北上「離さない」
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216: ◆FlW2v5zETA[saga]
2016/08/31(水) 14:12:30.22 ID:eYC625WV0


「いやー、ケイちゃんも元気そうで良かったよ。お寿司の件はたっぷり訊いといたけどねぇ……ふふふ。」
「女子の食い物の恨みは恐ろしい、と学んでくれるといいですねー。全くもう、ズルいんだから。」


電話も終わり、二人はまったりと先程の話を振り返っていた。

今日は今までの中で最も難関だったが、ここ数日の甲斐もあって見事ハンコを貰った。
明日はいよいよ卒検。ここを越えれば、後は免許センターで手続きを踏むのみだ。


「楽しみだねー。ついにアタシも車デビューかー。」
「車も楽しいですよー。私も大型取ったら、大分仕事の幅が広がります。」
「ねえねえ、最初の車ってどんなんが良いと思う?」
「そうですねー、街乗りだけならやっぱりオートマで……」


受かったら何に乗ろうか、などと話しながら、明日に備えて彼女達は夢の中へ。

しかし北上は、いささか楽しみになりすぎてしまったらしい。
中古車サイトで気になる車にチェックを入れては画像を保存し、にこにこしながらそれらを吟味していた。


この車はたくさん積めるし。

あの車は悪路に強い。

ああ、これなんてかっこいいじゃないか。


遠足前の子供のように、彼女は近い未来のドライブに想いを馳せる。
助手席に座るのは、勿論ケイだ。
免許のある大井が安心だが、40km先に住む彼女を迎えに行くまでがまだ怖いし、やはり最初は彼が良い。

しかし明日は大事な日。
そろそろ眠らなくては、と彼女は目を閉じるが、なかなか上がったテンションは下がらない。

そうだ、こんな時はよく眠れる音を聴こう!
そう思いイヤフォンに手を伸ばし。


彼女はそれを。

『ポータブルプレイヤー』ではなく、『スマートフォン』へと差し込んだ。


イヤフォンからは、彼女が音楽以外では、何より愛する音が流れる。
それは当人の顔に対して少し低いが、まだところどころあどけなさが残る声。

優しげなその声は、北上の心の奥にじわりじわりと広がっていく。


先程の通話を全て録音した、その音声は。


やがて北上も眠りに落ち、そして朝が来た。

遂に最終日。
これが終われば、また彼に会える。


そう思いながら二人は眠い目をこすり、朝の支度へと向かっていった。




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