5:名無しNIPPER[saga]
2016/07/09(土) 00:15:10.60 ID:Px08eZlJ0
☆
待つことは好きではなかったが、相手を待たすよりかはずっとマシだった。
自分のために相手が時間を浪費しているという事実が僕には耐えられず、誰かと待ち合わせをするときには十分以上前から待ち合わせ場所に着いておくことにしている。
そんな性格も僕らは不一致だったのだろう。
彼女と待ち合わせするときはどんな時であってもこっちが待つ側で、あっちが待たす側になっていた。
約束時間から五分十分平気で遅れる彼女に不満が無かったわけではないが、変わらないという安心感もあった。
案の定、今日も彼女は遅れてくる。
喫茶店の入り口でキョロキョロ周りを見渡し、こちらを見つけたと思えば大きな欠伸をして体いっぱいに怠さを表現してくる。
プロデューサーだった頃、彼女のそんな仕草にわざとらしさがあることには気付けなかった。
僕と会うとき、彼女がくたびれたウサギのぬいぐるみを離さないことも分かっていなかった。
「眠い」
淡白な音が空中にただよって消えていく。
僕は返事をしないまま、机の上に散らかしていた仕事の資料を片付ける。
待っている間に少しだけ簡単な読み物をしようとしてただけなのに、いつのまにか結構な量の書類が散らばってしまっていた。
僕のそんな態度のせいか彼女は不満げに息衝きながら席に座る。そして、すぐにお店で一番高いパフェを注文しだした。
空になりそうなコーヒーに気づいていたのかコーヒーも追加で頼んでいて、基本的に気は利く方ではあったが、こうあからさまなのは珍しい。
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