81:名無しNIPPER
2016/07/24(日) 18:51:12.41 ID:+whENkLl0
「Hiuw khao」
幼い声に、振り返る伊織。
そこにはボロ布のようなものを 体に巻いた少年が立っていた。
足にはなにも履いておらず、いつも裸足で駆けまわっているのか、傷跡がいくつも見てとれた。
「なんて言ってるのかわからないわね……ちょっと待って、翻訳機のスイッチを入れるから」
イヤリングを軽く摘む彼女。
どうやら、それが小型翻訳機らしい。
「なにか食べさせて」
「んー、お腹が空いたって言ってたのかしら?」
バッグの中をまさぐる伊織。
ビスケットバーとオレンジジュースを少年に手渡した。
「買ったばかりだからまだ少し冷たいと思うわ。他の人のいないところで食べるのよ」
伊織の言葉に続き、全く同じ声質のタイ語がネックレスから発せられる。
翻訳機であるイヤリングとスピーカーであるネックレスがリンクしているらしい。
「ありがとう、お姉ちゃん!」
少年の言葉に伊織の口元がほころぶ。
大きく手を振って去っていく少年を彼女も小さく手を振って見送った。
「さてと……」
伊織は小さく伸びをすると、バラックの立ち並ぶ狭い路地へと入っていった。
いくら、現地の様子を知る必要があるとはいえ、こんな路地まで入っていく必要は無論ない。
彼女はどこかネジの飛んだジャーナリストなどではないのだ。
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