34: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:20:26.28 ID:JY7Hx0GQ0
彼女は、再び空を仰ぎ、黒い緞帳の向こうで輝く星を見極めるように目を細めた。
ちひろ「でも、わたしは思うんです」
35: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:21:52.37 ID:JY7Hx0GQ0
見えない星――今もこの空の向こうには、星が鏤められているはずだ。しかし、それは私達には見えない。
見えないということは、そこにないのと同じことだ。
36: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:23:20.12 ID:JY7Hx0GQ0
ちひろ「プロデューサーさんは、よくアイドル達は星なのだと言います。わたしも、それをすべて否定することはしません」
ちひろ「たとえ見えなくたって、その輝きを伸ばして、その子の魅力をファンに伝えることがプロデューサーの役目なんだと、彼は言っていました」
37: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:24:53.89 ID:JY7Hx0GQ0
全ての星を輝かせることは、幾ら大きな力を持っていたとしてもできることではない。彼女はそう言っていた。
でも。
38: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:27:42.61 ID:JY7Hx0GQ0
ちひろ「彼女は夢を諦め、憧れることを辞め、大それた夢を抱いた自分を憎み、いまだ上を向き続ける少女達を羨み、全てを失ったと嘆きながら脱落していきました」
ちひろ「のあちゃんは、その子と似た目をしているんです」
39: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:29:15.02 ID:JY7Hx0GQ0
のあ「……そう、ね」
私は空を見る。
40: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:31:03.34 ID:JY7Hx0GQ0
――もしも私が変われば、私は卯月のようなアイドルになれるのだろうか。
温かな表情を浮かべ、誰かを元気づけられるアイドルになれるのだろうか。
もし、そうなら。
41: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:32:33.33 ID:JY7Hx0GQ0
翌朝、いつものように事務所に赴いた私は、まっすぐにプロデューサーのもとへ向かった。
P「おお、高峯か。おはよう」
42: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:34:04.89 ID:JY7Hx0GQ0
ちひろ「……それは、確かにみんなの武器です。でも、武器はそれだけじゃない」
のあ「そう。わかっているつもりよ。きっと私にも何かあるはず……でも、私は空っぽだった」
のあ「誰かの真似はできる。でも、創造することができなかった。誰もがしていることだけをなぞって、高望みなんてしないで、ただ石を投げられないようにする……それが私の全て」
43: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:36:13.67 ID:JY7Hx0GQ0
のあ「貴方のアイドル達の当たり前を、私には真似できない。これから先どれだけ時間をかけたとしてもきっと手は届かない」
のあ「……私の存在は、上を目指す彼女達にとって足枷になる。そのくらいなら私は、アイドルを辞めるわ」
44: ◆Ava4NvYPnY[saga]
2016/07/27(水) 00:37:58.32 ID:JY7Hx0GQ0
P「環境が変われば、力を発揮できる人間は数え切れないほどいる。それを見つけて磨くのが俺の仕事だ」
P「……でも、高峯は、違う世界を目前にしても、変われないと、そう言うんだな」
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