74: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/04(木) 02:33:04.09 ID:pTgjkfxw0
「ありがとね」
「なんの話?」
「前もって話をしてくれていたんでしょ」
「……せっかくそばにアイドルがいるんだ。訊かない手はないよね」
ただアイドルたちの仕事ぶりを見に行くだけではもったいない。城ヶ崎さん、宮本さん、新田さんには各プロデューサーを通して事前に質問をしていた。
彼女たちは俺の想像以上に親身に答えてくれた。おかげで、速水さんはなにかを掴めたようだ。
「そうね。でも、きっと私には思いつかなかった。……いえ、思いついてもなにもできなかったのかもしれないわ」
「どうだろうね。もしかしたらなにかの拍子に、なんでもなく気づいたかもしれないよ」
「……ねえ、プロデューサーさんの口から教えてくれない? 私に必要なもの」
俺は一度深呼吸をして、努めて明るく言う。
「先に言っておくけど、具体的な定義や観念の部分について、俺はなにも言えないよ。あくまで現状の速水さんに必要であり、不足しているものだとして聞いてほしい」
ええ。速水さんは頷いたようだった。
「速水さんは誤解してたんだと思う。アイドルとしての魅力はダンスやボーカルの巧さだけじゃないんだ。もちろん、技術があるに越したことはない。でも、技術だけなら上にはいくらでもいる」
なににしてもそうだ。上には上がいる。歌やダンス、演技にしても。技術だけを追求するならば、必ず上がいる。
「魅力は包括的な言葉なんだよ。歌もダンスも、そして容姿や性格も。すべてを内包している。だから速水さんの努力は無駄ではない。でも、足りない」
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