過去ログ - 文香「大きな古時計」
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22: ◆/M/./pqGYyzY[saga]
2016/08/03(水) 17:05:52.95 ID:a2seU7mk0
以前のライブでもそうだった、更にあの時は倒れてしまった、などノブに手をかけてなお及び腰

どうせならありすちゃんも誘ってあげれば、とはにかんでいた時文香は時計屋の中だった

チリンチリンとドアに付いたベルが鳴り来客を知らせる
以下略



23: ◆/M/./pqGYyzY[saga]
2016/08/03(水) 17:06:44.55 ID:a2seU7mk0
「いっらしゃい、どんな物をお探しですかな」

すっと秒針の音は消え店主だろう老いた人物が文香に声をかける

その店主は、腰は曲がらず声は若さに溢れていた
以下略



24: ◆/M/./pqGYyzY[saga]
2016/08/03(水) 17:07:24.18 ID:a2seU7mk0
文香は改めてその時計の方へ振り返った

文香よりも少し大きな高さで上の方にローマ数字が刻まれた文字盤がある

その下ではゆったりゆったりと振り子が揺れていた
以下略



25: ◆/M/./pqGYyzY[saga]
2016/08/03(水) 17:08:02.55 ID:a2seU7mk0
店主「お美しいお嬢さんは絵になりますなあ」

店主がそう言いながら売り場、と言ってもガラスケースの近くへと戻っていく

文香は少し照れながら店主を追い、何か話をと思い古時計について聞いてみた
以下略



26: ◆/M/./pqGYyzY[saga]
2016/08/03(水) 17:08:40.82 ID:a2seU7mk0
店主が時計を眺める目は懐かしさと不安と期待を含んでいた

店主「まるでの歌の様じゃろ? この時計の話をするといつも息子や孫がそう言うんじゃよ。だからのう、わしもあの歌は大好きなんじゃ」

文香「歌、ですか。でも、あの歌は、私は聞いていると、少し悲しくなります」
以下略



27: ◆/M/./pqGYyzY[saga]
2016/08/03(水) 17:09:36.06 ID:a2seU7mk0
童謡ならばもっと幸せな歌でいいのに

小さい頃、聞いた時の感想はそうだった

そんなこと今思い出したく無かったな、文香は知らないうちに表情が曇っていた
以下略



28: ◆/M/./pqGYyzY[saga]
2016/08/03(水) 17:10:59.66 ID:a2seU7mk0
店主「お嬢さんや、何故そう悲観的になるのじゃ?」

文香「あの歌ではお爺さんは天国へ召され、時計とは別れさせられました。折角大切にお爺さんはされてきたはずの時計なのに」

店主「お嬢さん、生き物は例え人間でもいつかは死ぬんじゃ。いくら現世が恋しくても、いくら時計が大切でも、じゃ。それにのう、いつまでもそのお爺さんが時計と一緒ではその時計を知る人は増えないじゃろ?折角のいい時計なんじゃ、もっと沢山の人に知ってもらった方がいいじゃろう?」
以下略



29: ◆/M/./pqGYyzY[saga]
2016/08/03(水) 17:11:36.13 ID:a2seU7mk0
確かにそうだけれどお爺さんが時計を手放したく無かったら?

お爺さんがどうしてお別れしなくちゃならないの?

お爺さんが可哀想すぎる、まるで駄々をこねる子どものように文香は反論していた
以下略



30: ◆/M/./pqGYyzY[saga]
2016/08/03(水) 17:12:19.13 ID:a2seU7mk0
店主「お嬢さんは優しいのう、とてもとても。ここの時計は受け継いでくれる息子や孫が居る。時計は決して止まらず見守ってくれるじゃろう、わしの代わりにの。そしてそのお爺さんもそんな息子や孫を得たからお別れしても辛くなかった、とわしはそう思うの。それにお別れしてしまっても息子や孫はわしを覚えていてくれるじゃろう。それ以上の幸せがあるだろうかのう?」

文香の目には気付かぬうちに雫が溜まっていた

たった20年の人生では理解しきれない解答に感情が昂っての涙だった
以下略



31: ◆/M/./pqGYyzY[saga]
2016/08/03(水) 17:12:52.94 ID:a2seU7mk0
とめどなく溢れる涙はどうして止まらない?

今度はそんな自分の姿に子どもっぽく思い、恥ずかしさから更に俯き涙は止まっていた

店主「泣いても誰も怒らんよ、咎めんし止めもしない。わしはむしろ嬉しいよ、こうしてただの老人を思い泣いてくれることが。その気持ちを大切になさい。人を思いやり優しい気持ちを。それは決して誰でもが持つものではないからの」
以下略



32: ◆/M/./pqGYyzY[saga]
2016/08/03(水) 17:13:25.34 ID:a2seU7mk0
ゴーン、ゴーン、ゴーン...

時を告げるベルは優しく文香を包んだ

そして声高らかに店主は言った
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