2:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:25:09.20 ID:1/zk8vPV0
 プロローグ 部屋 
  
  
  
3:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:26:24.53 ID:1/zk8vPV0
 「では、最初に思い出せる所からで良いから話してくれる?」 
  
 そう言われたのは僕がウトウトしかけていた時だった。 
 慌てて目を開いて目の前に居る男に答える。 
  
4:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:27:07.94 ID:k0/bWBKq0
 「…寝てたの?」 
 「え?何がですか?」 
  
 男の言葉に僕は慌てて男を見た。 
  
5:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:27:53.89 ID:k0/bWBKq0
 「そんな事より、さっき言った様に思い出せる所からで良いから話をして欲しいんだ」 
  
 シャーペンのコンコンはまだ続いていた。 
 男はその作業をしながら机の上に無造作に置いてあるルーズリーフを自らの手元に持って来る。 
 何を書くんだろう…? 
6:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:29:45.50 ID:k0/bWBKq0
 「本当にどこからでも構わないんだ。何なら昨日の夕食のメニューからでも構わないよ」 
  
 何、そのアメリカンジョーク。 
 後、一々外人の言葉を和訳した様な話し方は何なの? 
 僕は彼の言葉をスルーして椅子の背もたれに体重を掛け少し腕組みをして今更ながらこの部屋を見回した。 
7:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:31:13.52 ID:k0/bWBKq0
 部屋の観察を終えて今度は正面に座る男を見た。 
 年の頃は三十代中頃位で中肉中背。 
 白いワイシャツに濃い赤と青のストライプのネクタイをしている。スーツは着ていない。 
 彼の顔は特にこれと言った特徴が無かった。 
 多分僕に予備知識が無く街ですれ違えば彼と出会った事など一生思い出す事などないだろう。 
8:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:32:13.42 ID:k0/bWBKq0
 「…あの」 
  
 僕の言葉にエリート風上司は「うん」と頷いた。 
  
 「…名前を…」 
9:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:33:09.73 ID:k0/bWBKq0
 「いや、色の名前じゃ無いよ…村崎と言う名前なんだ」 
  
 どうやらエリート風のムラサキは僕の心を見透かす事が出来るらしい。 
 いや、それとも僕が顔に出やすいタイプなのかも知れない。 
 …てか、どうでも良い。つーか、長い。 
10:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:34:16.98 ID:k0/bWBKq0
 ムラサキのシャーペンのコンコンがやたらと激しくなってきた。どうやら彼も少しイライラし始めたらしい。 
 これ以上彼を怒らせてはいけないのかもしれないんだが… 
  
 「じゃあ…どこから…」 
 「いやだから、どこからでも良いんだよ…ただ君の住所とか電話番号とかはもう良いよ。本当に」 
11:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:35:08.13 ID:k0/bWBKq0
 ただこれ以上は本当に不味そうだ。ムラサキのシャーペンが破壊されてしまうかもしれない。 
  
 「それじゃあ…かなり昔の話からでも…良いっすか?」 
 「もちろん構わない」 
 「じゃあ、千年位前からの話を…」 
12:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 12:36:12.30 ID:k0/bWBKq0
 コンコン…コンコン…コンコン。 
 ムラサキが奏でるそれは僕の記憶を呼び覚ます何某かの道標になったのかも知れない。 
 脳の片隅に海が広がる。それは太陽の陽射しをキラキラ反射している夏の海の風景だった。 
  
 「…夏休みに…」 
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