過去ログ - 海辺の町と赤く染められた国
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51:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 13:17:36.85 ID:k0/bWBKq0
「…それ、出来るの…?」

僕がうずくまっている後ろから声が聞こえた。
奈緒が立っていた。

以下略



52:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 13:18:28.15 ID:k0/bWBKq0
「どうだった…?俺、惜しかったかな?」
「う〜ん…何て言うか…目を閉じてブンブン腕を振り回してるだけ、みたいな…」

うわ、かっこ悪!

以下略



53:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 13:19:31.49 ID:k0/bWBKq0
「よいしょっと…」

奈緒は僕のうずくまっている隣に腰掛けた。
僕も体勢を変えて奈緒と同じ向きに座った。

以下略



54:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 13:20:28.08 ID:k0/bWBKq0
「…結局、最後まで修行をしてたのは達矢だけでしたね…」
「…って、言うかお前らが飽きるのが早過ぎね?」
「そうかな?」
「そうだわ!信一は三日で辞めるし、お前に至っては薪にキティちゃんのシールを貼って見てただけじゃねーか!」
「あはっ、だっけ?」
以下略



55:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 13:21:35.23 ID:k0/bWBKq0
「…五年経ったんだな…」

しばらくの沈黙の後に僕が口を開いた。

「うん…」
以下略



56:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 13:26:48.97 ID:k0/bWBKq0
五年前の夏、この海で奈緒の父親…津村秀樹は亡くなった。

それは激しい夕立が降り注ぐ中での出来事だ。
目の前にあの時の情景が浮かぶ…。
遠くで響くサイレンの音。そして雄叫びの様な声を上げる奈緒の母親…。
以下略



57:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 13:27:50.59 ID:1/zk8vPV0
…津村秀樹は泳ぎが苦手ではない。いや、どちらかと言うと得意だったんだ。

だって彼は…全日本の百メートル自由形の優勝者だったから。

でも彼は水死した。
以下略



58:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 13:28:47.15 ID:1/zk8vPV0
僕はあの時、津村秀樹と一緒にいた。
彼の最後の言葉は「すぐに誰かを呼んでくれ!」であった。
僕はあのどす黒い荒れた海へ飛び込む事は勿論出来なかった。
だが彼は何の躊躇もせずに飛び込んでいった。
奈緒を…救う為に…。
以下略



59:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 13:29:58.15 ID:1/zk8vPV0
「…奈緒のお婿さんになってくれって」
「…それはない」

僕ら二人は顔を見合わせ微かに笑った。

以下略



60:名無しNIPPER
2016/08/07(日) 13:31:29.29 ID:1/zk8vPV0
「達矢!強くなれ…そして自分を信じろ」

そう言って彼は僕が修行するのを笑顔で見ていた。
あの日最後に彼は僕にこう言ったんだ…。

以下略



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