過去ログ - モバP「誰かの夏と終わり」
1- 20
15:名無しNIPPER[saga]
2016/08/27(土) 22:14:29.67 ID:Si0tSdr+0
 衣装を解いて、身体を拭いて、浴衣に着替えて、髪を上げて。

 ほんのうっすら、紅を差して。

 昂りは身体に残したままで。


 待ち合わせ場所は、うちの屋台のあった場所。

 次々と畳まれ始める出店の間を、お祭り後の熱気の中を、あたしは目立たないように、整えた諸々を崩さないように、慎重に抜けて行った。

 でも、その後ろ姿を見止めたとき。

 やっぱり最後は、駆け足になる。

「お、おまたせっちゃ! プロデューサー!」

「おう、お疲れ、あおい……」

 ひゅうと夜風が吹いて、互いの格好を見合って、

「似合ってるっちゃ!」

「似合ってるな」

 あたしたちはきょとんとして、すぐにおかしくておかしくて、あたしたちは笑った。


 屋台も花火も音頭さえない、あたしたちの祭り。
 

 生温い温度の残る地元の夜道を、月に照らされて、あたしとプロデューサーは連れ立って歩く。

 会場だった公園からはもう大分離れていた。壊れた電灯みたいな虫の声を聞きながら、すり足で、雑草交じりの田舎道をたどる。

 お祭りの後は、一年の安泰を願って神社に参るのが慣わしだった。

 だけど、明日の仕込みもあるから、おとうちゃんやおかん、店のみんなはもう参っていた。

 身内から、明らかに気を遣われるのは、この上なく恥ずかしい。

 恥ずかしいけれど……チャンスなのも、確かだった。

「ごめんね、お疲れのところ、付き合ってくれて」

 勝手に盛り上がってしまいそうな気持ちを落ち着けたくて、今更、アイサツみたいなことを口走る。

「葵こそ、疲れてないのか? ずっと店に立ってて、休みなしでライブ、盆踊り、あと子ども会と……」

「あと……えと、地元のよさこいチームっちゃね」

 依頼には、全部応えたかった。

 あたしはあくまでも、町民のひとりとして、有志で、お祭りに参加した。

 それをこの人に、お客として、楽しんで欲しかった。それがあたしの恩返しだった。

「へへっ、それくらいでへばるような、ヤワな女じゃないって、プロデューサーが一番よく知ってるでしょ?」 

 本当は、違う。足は棒みたいだし、ライブが終わってお色直しに一旦家に帰ったとき、そのまま倒れこんでしまいそうだった。

 でも、やっと、たどり着いた時間だから。

「どうだった? あたしの凱旋ライブは!」  

 神社の足元に到着して、そびえる石段を見上げる。月光に浮かびあがるそれはぞっとするほど白い。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
21Res/29.81 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice